士業と士業の境界 ― 遺言書作成支援に関わる専門家たち

1. はじめに

「遺言書を作りたい」と考えたとき、誰に相談すればよいか迷う方は少なくありません。実は、遺言書の作成支援は複数の「士業(専門職)」が関わることができる分野で、それぞれの役割には“業際(ぎょうさい)”という境界があります。この記事では、遺言作成に関わる主な士業とその違いについて、分かりやすくご紹介します。


2. 遺言書作成業務とは?

遺言書は、将来の財産の分け方や家族へのメッセージを伝える大切な書類です。
形式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」などがあり、どちらにも法律的な正確さと実務的な配慮が求められます。


3. 士業ごとの役割と得意分野

■ 行政書士:書類作成と相談支援の専門家

行政書士は、法的アドバイスを伴わない文書作成や手続き支援を得意とします。
遺言書の原案作成や、遺言に関する基本的な相談に応じることができます。

👉 特徴:相続人調査、財産目録の整理、公正証書遺言の作成サポートなど


■ 司法書士:登記や相続手続きに強い専門家

司法書士は、相続登記(不動産の名義変更)を含めた遺産承継業務に強みがあります。
遺言執行者として手続を代行するケースもあります。

👉 特徴:不動産を含む相続時の手続き支援、遺言執行業務の受任など


■ 弁護士:紛争リスクに対応できる法律のプロ

弁護士は、法律相談と代理行為が唯一認められた士業です。
遺言の有効性やトラブルのリスクがある場合、弁護士に依頼することで、裁判を含めた対応が可能です。

👉 特徴:遺留分トラブル、遺言無効の主張など法的争いへの対応


■ 公証人:公正証書遺言の作成担当官

公正証書遺言は、公証人という公務員が作成する法的に強い遺言です。
原案の相談は他の士業が行い、公証人が正式な遺言として仕上げます。

👉 特徴:本人確認、意思確認、公正証書の作成と保管


4. 遺言作成は“チーム戦”で進める時代へ

遺言書作成は、一人の専門家で完結するとは限りません。
例えば、「行政書士が遺言案を作成 → 公証人が公正証書化 → 司法書士が登記対応」というように、連携することでより確実な支援が可能です。


5. おわりに

士業ごとにできること・できないこと(業際)を理解することで、ご自身に合った支援者を選びやすくなります。
迷ったときは、「最初の相談窓口」として、親身に話を聞いてくれる行政書士などに気軽にご相談ください。

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