宅地建物取引業(宅建業)を始めるには、所轄の都道府県知事または国土交通大臣からの許可が必要です。許可を得るためには、法律で定められた要件をすべてクリアし、所定の書類をそろえて申請しなければなりません。ここでは、許可を妨げる「欠格事由」と、申請に必要な主な書類をまとめて解説します。
1. 許可の欠格事由 ― 以下に該当すると許可不可
宅建業法では、以下のいずれかに該当する場合、許可を受けられない(欠格)と定めています。
欠格事由 | 内容例 |
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暴力団関係者等 | 暴力団員・その関係者、暴力団と密接な関係を有する者 |
破産者 | 破産手続開始決定を受け、復権を得ていない者 |
心身喪失者 | 成年被後見人・被保佐人等、判断能力が不十分な者 |
法令違反歴 | 宅建業法違反で許可取消・業務停止を受け、一定期間経過していない場合 |
誠実性欠如 | 虚偽・不正な手段でその他の許可を受けたことがある者 |
- 法人の場合は「役員全員」がこの欠格事由に該当しないことが必要です。
- 個人の場合は申請者本人が該当しないことが求められます。
2. 財産的基礎要件 ― 安定的な事業運営の担保
要件 | 内容 |
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純資産額 | 500万円以上(個人・法人とも) |
営業保証金 | 500万円以上の保証協会加入も可 |
- 純資産額:直近期末の貸借対照表(B/S)で「純資産」が500万円以上であること。
- 営業保証金:許可後に保証協会への加入で代替可能(保証料が別途必要)。
3. 専任宅地建物取引士の配置要件
要件 | 内容 |
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配置数 | 事務所ごとに1名以上 |
専任性 | 他業務兼務は原則不可。常勤で事務所に勤務。 |
資格保持 | 宅地建物取引士資格証を所持し、登録済みであること |
- 専任:週40時間のうち32時間以上その事務所で勤務することが求められます。
- 資格登録:都道府県知事への宅建士登録が完了している必要があります。
4. 事務所要件 ― 独立性と標識の掲示
要件 | 内容 |
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独立事務所 | 他業種と共用でない専用スペース |
標識掲示 | 事務所入口に「宅地建物取引業者」の標識を掲示 |
- 自宅兼事務所も可ですが、来客対応スペースと業務スペースを明確に分ける必要があります。
- 標識は法定の書式・寸法に従って作成します。
5. 主な必要書類一覧
書類名 | 提出先 | ポイント |
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許可申請書 | 都道府県庁(又は国交省) | 定型様式に正確に記入 |
登記事項証明書 | 法務局 | 最新の履歴事項全部証明書 |
住民票(個人申請)/登記事項証明(法人) | 役所/法務局 | 発行から3ヶ月以内 |
純資産証明(貸借対照表) | 自己作成or税理士作成 | 500万円以上を証明 |
保証協会加入申込書 | 指定保証協会 | 営業保証金代替の場合 |
専任宅建士証明書 | 都道府県 | 宅建士登録証の写し |
使用承諾書/自認書 | 自己所有or賃貸 | 事務所の適法性を証明 |
誓約書・略歴書 | 申請者 | 欠格事由不存在の宣誓 |
6. まとめと次のステップ
- 欠格事由チェック:まずは自分(法人役員)が該当しないか確認。
- 財務基盤の確認:直近期決算で純資産500万円以上か、保証協会加入で代替。
- 専任宅建士の確保:資格登録済みの宅建士を事務所に配置。
- 必要書類の収集・作成:上表をもとに書類をそろえる。
- 申請提出:都道府県庁または国交省地方支分部局へ。
これらをクリアすれば、宅建業許可取得に大きく前進します。
書類作成や手続き代行が必要な場合は、行政書士までお気軽にご相談ください。