【医療と法務|第3回】
がんによる入院と認知機能の低下
~判断能力が揺らぐ前に備える~
がん治療では、手術・放射線・抗がん剤などの治療が長期間にわたることも多く、入退院を繰り返す中で、一時的または慢性的に判断力が低下するケースがあります。
そのようなときに、本人の希望を正確に反映し、生活や財産を守るためには「元気なうちの備え」が非常に重要です。
一時的な混乱でも「判断能力なし」とされる場合も
がんによる入院や治療の影響で、
- 薬の副作用による意識混濁
- 脱水や感染によるせん妄
- 高齢による認知機能のゆらぎ
など、一時的に本人が意思表示できない状態に陥ることがあります。医療現場ではよく見られることで、「昨日まで元気だった人が、突然判断不能と見なされる」ことも珍しくありません。
このような状況で大きな問題となるのが、
- 財産管理(預金の出し入れ、医療費支払いなど)
- 法的手続き(相続対策、公正証書作成など)
- 治療方針の決定(延命措置や転院の希望)
です。
判断能力の低下に備える法的手段
行政書士としてご案内する「備えの選択肢」は以下のようなものです:
1. 公正証書遺言の作成
遺言は本人の判断能力がはっきりしている時にしか作成できません。いざとなってからでは間に合わないことも多いため、早めの準備が大切です。
2. 任意後見契約
将来、判断能力が不十分になった時に備えて、「信頼できる人」に代理を任せる契約。公正証書での作成が必要です。
3. 財産管理等委任契約
判断能力があるうちから、通帳管理や各種手続きを誰かに任せたい場合に活用できます。任意後見と併用することも可能です。
4. 医療・介護に関する意思表示書
延命治療・入院の希望・終末期の方針などを、自分の言葉で記録に残しておくことで、家族も安心して判断できます。
判断力がある「今」が、唯一のチャンスかもしれない
判断能力の低下は「ある日突然」訪れる可能性があります。
だからこそ、意志がはっきりしている今この時こそが、最も重要な準備のタイミングです。
これらの備えを通じて、「望んだ形で最期まで自分らしく生きること」「家族の負担を最小限に抑えること」につながります。
次回の投稿では、「がんの治療中に“争族”を避けるために実際にあった遺言作成(※想定事例)」をご紹介します。
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