【医療と法務|第5回】
がん終末期と任意後見契約
~「もしもの時」に備えておく信頼のしくみ~
がんの治療が進み、終末期に入ると、医療・生活・財産に関する意思決定が本人だけで難しくなる場面が出てきます。
そうしたときに有効な制度の一つが、「任意後見契約」です。
判断能力が不十分になる前に交わす契約
任意後見契約とは、将来、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人に後見を依頼しておく制度です。
- 任意後見人になれるのは、親族でも第三者でも構いません。
- 公正証書で契約し、発効は「判断能力が不十分になったとき」から。
- 医療同意や介護手続きなどの日常生活上の判断にも対応できるのが特徴です。
終末期における具体的なメリット
がんの進行により、本人が意思表示をすることが難しくなったとき、任意後見契約があることで以下のような支援が可能になります:
✅ 医療・介護の同意や手続きの代行
「本人の希望」に沿って、治療・転院・施設入所などの判断がスムーズに行われます。
✅ 銀行・年金・生活資金の管理
入出金の確認や、医療費・家賃の支払いなどを代理で行えます。
✅ 家族間のトラブル防止
誰が何をするかを契約で明確にしておくことで、家族内での「意見の食い違い」や「責任の押し付け合い」を防げます。
任意後見契約が向いているケース
- がん治療をしながら一人暮らしをしている方
- 親族との距離があるが、信頼できる知人がいる方
- 家族が高齢または多忙で、自分の将来が心配な方
こうした方には、特に早めの準備をおすすめしています。
任意後見と「今できること」をセットで考える
任意後見契約は、判断能力がある「今」しか結べません。
公正証書遺言や財産管理等委任契約などと組み合わせることで、将来のリスクに広く対応できます。
終末期は、法的にも医学的にも「準備が結果を左右する」局面です。
あなたらしい終末期を迎えるために、信頼できる人と支え合う法的仕組みを整えておきましょう。
次回は、「がんと医療同意書 ~命の選択を支えるために~(※想定事例)」をお届けします。
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