【医療と法務|第9回】

がん治療と生活を支える公的制度

~生活保護だけじゃない、知っておきたい支援制度~


がんの診断を受けた後、患者さんやご家族からよくご相談いただくのが「治療費」や「生活費」に関する不安です。特に単身者や高齢の方は、身近に頼れる人がいない場合、経済的な見通しが立たず、治療を断念するケースもあります。

ここでは、行政書士としてご案内できる法的・制度的支援のポイントを整理してご紹介します。


1|高額療養費制度

がん治療は長期にわたることが多く、医療費負担が重くなりがちです。
この制度を使えば、月ごとの自己負担額に上限が設けられ、それを超えた分が払い戻されます。

  • 所得区分に応じて上限額が異なります
  • 「限度額適用認定証」の事前申請で、窓口負担軽減も可能

2|傷病手当金・障害年金

傷病手当金(会社員・公務員等の健康保険加入者)
働けない期間、給与の約2/3を最大1年6か月支給される制度です。
※退職後の申請も一定条件で可能です。

障害年金(がんが原因で一定の障害が生じた場合)
がんの状態により、「内部障害」として障害年金の対象になることがあります。


3|介護保険制度の活用

がんによって日常生活が困難になった場合、介護保険の要介護認定を受けることで、
訪問介護・通所サービスなどを受けることができます。

※がん末期の場合は、年齢にかかわらず介護保険を申請可能です(特定疾病に該当)。


4|生活福祉資金・緊急小口資金

市町村の社会福祉協議会が行う貸付制度で、医療費や入院費用にも対応可能。
特に単身高齢者や低所得者にとって、民間ローンよりも現実的な選択肢です。


5|生活保護(最終手段として)

資産・収入が基準以下であれば、がん治療中でも生活保護の受給が可能です。
ただし、要件審査や資産調査があるため、事前相談をおすすめします。


◯ 行政書士が支援できること

  • 高額療養費や年金制度の申請支援
  • 医療費支出と財産管理のための信託設計
  • 成年後見・任意後見の利用に関する相談
  • 公正証書遺言による意思の明確化と死後の手続き支援

「知らなかった」では済まされない制度活用

がんと診断されたとき、必要なのは治療だけではありません。
**生活を守り、治療を継続するための“経済的備え”**が、安心して向き合う土台となります。


次回(第10回)は、終末期医療における「延命治療と法的意思表示」の事例をお届けします(遺言専門サイトにて掲載)。


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