📝遺言作成にあたり|第3回

相続人・受遺者を整理する


💡想定事例

須坂市にお住まいのCさん(68歳・男性)は、10年前に再婚しました。
前妻との間に成人した息子が一人、現妻との間には子どもはいません。
現在の生活は円満で、奥様と二人暮らし。

ある日、友人の助言で「遺言書を作っておいた方がいい」と言われ、
調べてみたところ「前妻の子にも相続権がある」と知り驚きました。

「今の妻に自宅を残したいけれど、法律上どうなるのか」
――その疑問が、遺言作成を考えるきっかけになりました。


⚖️解説:法定相続人を正確に把握することから始める

遺言を考える際に最初に確認すべきなのは、
**「誰が法定相続人になるのか」**という点です。

1️⃣ 法定相続人の基本構成

民法では、相続人となる順位が定められています。

順位相続人主な例
第1順位子(および孫:代襲相続)実子・養子
第2順位直系尊属(父母・祖父母)子がいない場合のみ
第3順位兄弟姉妹(および甥姪:代襲)子も直系尊属もいない場合

配偶者は常に相続人となり、他の順位の者と“同時に”相続します。

例:

  • 配偶者と子がいる → 配偶者½・子½(均等)
  • 配偶者と親 → 配偶者⅔・親⅓
  • 配偶者と兄弟姉妹 → 配偶者¾・兄弟姉妹¼

2️⃣ 「受遺者」という選択

遺言書では、法定相続人以外の人にも財産を残すことができます。
この場合、その人は「受遺者」となります。

たとえば――

  • 再婚後の妻の連れ子
  • 長年介護してくれた知人
  • 地元団体・慈善団体への寄付

いずれも遺言がなければ受け取る権利は発生しません
つまり、受遺者への意思を実現できるのは遺言書だけなのです。


3️⃣ 複雑な家族関係では、戸籍で確認を

再婚・養子縁組・離婚・認知などの経歴がある場合、
思っているよりも相続人が多く存在することがあります。

「誰が相続人なのか」を明確にするために、
遺言作成前に戸籍謄本の収集を行うことをおすすめします。


🧭 行政書士からのひとこと

「遺言で誰に残すか」を考える前に、
法律上、誰が相続人となるのかを知ることが出発点です。

そのうえで、「法律の範囲」と「自分の想い」をどう調整するかを考えることで、
無理のない、納得感のある遺言内容に近づきます。


📚次回予告

第4回|遺留分とその配慮
――公平と納得のバランスを保つために――

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