📝遺言作成にあたり|第4回
遺留分とその配慮
💡想定事例
長野市郊外で会社を経営するDさん(72歳)。
妻と3人の子どもがいますが、長男が後継者として家業を継ぎ、
次男と三男はそれぞれ別の仕事で独立しています。
Dさんは「会社の土地と建物は長男にすべて継がせたい」と考え、
遺言で長男にすべてを相続させる内容を検討していました。
しかし行政書士に相談すると、
「遺留分の問題を考慮しないと、相続後にトラブルになる可能性がある」
と指摘されました。
⚖️解説:遺留分とは「最低限の取り分」
遺留分とは、法律上の相続人が最低限、保障されている相続分のことです。
簡単に言えば、「どんな遺言を書いても、一定の取り分だけは奪えない」という制度です。
1️⃣ 遺留分があるのは誰?
遺留分を主張できるのは以下の相続人です。
- 配偶者
- 子(および代襲相続人)
- 直系尊属(親など)
※ 兄弟姉妹には遺留分がありません。
2️⃣ 遺留分の割合(目安)
| 相続人構成 | 遺留分の合計 | 相続人1人あたりの目安 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 相続財産の1/2 | 各相続人で等分 |
| 配偶者のみ・子なし・親あり | 相続財産の1/3 | 各相続人で等分 |
例:
全財産を長男に遺すという遺言をした場合でも、
他の子には「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」を行う権利があります。
3️⃣ トラブルを避けるための工夫
遺留分を無視した遺言は、
相続発生後に**「納得できない」**と感じた家族からの請求を受け、
結果的に財産分割が長期化することがあります。
回避・軽減のためには以下の方法が考えられます。
- 💬 生前に話し合っておく
「なぜこのような内容にするのか」を説明し、理解を得る。 - 📄 付言事項で気持ちを添える
「長男が事業を継いでくれるため、このように定めました」など、
想いを伝える文言を加えることで誤解を防ぐ。 - 💰 代償分配の検討
長男に事業用資産を渡す代わりに、他の相続人には預貯金・保険金などを残す。
🧭 行政書士からのひとこと
「遺言は自由に書ける」と思われがちですが、
実際には**法定相続人の最低限の権利(遺留分)**を侵害しないことが前提です。
一方で、遺留分を踏まえたうえで、
家族の状況や事業継承の実情に合わせた設計をすることで、
「公平」と「納得」を両立した遺言内容にすることができます。
📚次回予告
第5回|医療・介護との関係を考える
――判断能力と作成時期、そして将来への備え――


