🟦遺言作成にあたりご存じですか?

「遺言書がある」と「遺言書が“使える”」は別の話です


【想定ケース】

長野市で一人暮らしをしている70代のAさん。
長年、糖尿病と高血圧の治療を続けながら、週に一度はかかりつけ医に通っています。

最近になって体力の低下を感じるようになり、「元気なうちに子どもたちのために遺言を書いておこう」と考え、市販の本を参考に自筆で遺言書を作成しました。

内容は、

「自宅の土地建物は長男に、預金は次男に」

という簡潔なもので、署名・日付・押印もきちんと記載されていました。

ところが、Aさんが亡くなった後、遺言を確認した長男から次のような相談がありました。

「父の遺言書があるのに、手続きが進まないんです…」

理由を確認すると、

  • 遺言執行者が指定されていなかった
  • 不動産の表示が法務局で求められる形式になっていなかった
  • 預金口座の記載が特定できず、金融機関の手続きが止まっていた
    など、形式上の不備がいくつもありました。

せっかく残された遺言書も、実際の相続手続きでは「使えない」状態になってしまったのです。


【解説】

遺言は「書けば終わり」ではありません。
本当に重要なのは、遺言の内容が確実に実行できる形になっているかどうかです。

相続の現場では、

  • 書き方の誤りで無効になってしまう
  • 財産の特定があいまいで登記が進まない
  • 相続人の一部が遺言内容を理解できず紛争になる
    といったトラブルが珍しくありません。

特に医療を受けながら生活している方や、高齢で判断能力の低下が懸念される方の場合、作成時の状況をきちんと記録し、公正証書で残すことが後の安心につながります。


【行政書士からのアドバイス】

遺言作成では「法的な正確さ」と「実務での使いやすさ」を両立させることが大切です。

  • 家族構成や財産の整理を丁寧に行う
  • 判断能力が確かなうちに作成する
  • 遺言執行者を明確にしておく
  • 公正証書遺言を選択して、手続の確実性を高める

こうした点を意識しておけば、遺言は単なる書面ではなく、家族を守るための仕組みとして生きていきます。


【まとめ】

遺言は「思いを形にする」だけでなく、「実際に実行できるよう整えておく」ことが重要です。
医療や介護の事情がある方はもちろん、元気なうちから一度ご自身の財産や家族関係を整理し、法的に有効な形で備えておくことをおすすめします。

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