🟦遺言作成にあたりご存じですか?
書いたのに無効?自筆証書遺言の落とし穴
【想定ケース】
長野県内に住む80代のBさんは、元気なうちに自宅の土地を長女に相続させたいと考え、自筆で遺言書を作成しました。
Bさんの遺言書は、ノートに手書きで以下の内容が書かれていました。
「自宅は長女に相続させる。預金は次男に。」
署名と日付もあり、一見問題なさそうに見えました。
ところが、Bさんが亡くなった後、遺言書を見た長女と次男は戸惑います。
金融機関や法務局での手続きに必要な書式や情報が不足していたのです。
- 土地の所在や地番が不明瞭
- 預金口座の詳細が書かれていない
- 日付や署名の形式に不備があった
結果として、自筆遺言は家庭裁判所での検認が必要になり、手続きが大幅に遅延してしまいました。
【解説】
自筆証書遺言は、自宅で簡単に作成できるという利点がありますが、形式的な条件を満たさないと無効になるリスクがあります。
主な注意点は以下の通りです。
- 全文自書:パソコンや他人が書いた部分があると無効
- 日付・署名・押印:正確に記載されていないと効力が問われる
- 財産の特定:不動産や預金は、口座番号や地番など具体的に記載する
- 相続人間の理解:内容が曖昧だと後で争いになる可能性がある
特に高齢者や病気のある方は、作成時の健康状態や判断能力も確認しておくことが重要です。
【行政書士からのアドバイス】
自筆証書遺言を作る場合でも、以下の工夫でトラブルを防ぐことができます。
- 財産の明細を別紙に整理:口座番号や土地の地番、建物の構造などを明記
- 公正証書遺言との併用検討:必要に応じて公証人に作成してもらう
- 遺言執行者の指定:相続発生後に確実に実行できる体制を整える
- 家庭裁判所での検認を意識:自筆遺言は必ず検認が必要なため、手続きの流れを家族に説明
遺言は、書いた瞬間がゴールではなく、家族がスムーズに手続きを進められる形にしておくことが本当の目的です。
【まとめ】
自筆証書遺言は手軽ですが、形式・内容・実務手続の三点セットを確認しておかないと、思い通りに活かせないことがあります。
作成前に専門家に相談し、家族や財産の状況に応じた最適な形で備えておくことが安心につながります。

