~命の瀬戸際に託す、想いのかたち~
人はいつ、何があるかわかりません。
事故や急な病気、災害――そんな「もしも」に直面したとき、
「せめて、あの人に気持ちだけは伝えたい」
そう願う方のために、特別な遺言の方法が用意されています。
それが「一般危急時遺言」です。
◆ 一般危急時遺言とは?
病気や事故などで 死が差し迫っているとき、
通常の方法(公正証書や自筆証書など)では間に合わない場合に、
例外的に認められる遺言の形式です。
正式には「民法976条」に定められたもので、
「緊急時だからこそ、本人の意思を残せるように」という制度です。
◆ どうやって作るの?
以下の要件を満たせば、筆記ができなくても遺言が成立します。
✅ 条件:
- 病気や事故などで死亡が迫っている状態
- 証人3人以上の立ち会いがある
- 口頭で内容を話し、証人の1人がそれを筆記する
- 他の証人が筆記の内容を確認し、署名する
つまり、その場で遺言内容を口頭で伝え、証人がそれを形にする形です。
◆ どんな場面で使われる?
- 病院で意識があるうちに家族へ遺産分けの希望を伝えたいとき
- 事故にあい、救急搬送される前に意思表示をしておきたいとき
- 遺言を作る余裕のない災害現場などで、命が危うい状況のとき
一刻を争う場面でも、「家族への想い」を法的に残すことができる制度です。
◆ 注意すべきポイント
この遺言には厳しい制限と期限があります。
🔔 ポイント:
- 20日以内に家庭裁判所で「確認手続き(検認)」が必要
- 裁判所が「本当に危急状態だったのか」を確認し、無効になることもある
- 回復した場合は、改めて正式な遺言書を作る必要がある
あくまでも「緊急避難的」な遺言形式ですので、恒久的な遺言にはなりません。
◆ 一般危急時遺言をめぐるエピソード
たとえば――
がんの末期で意識が混濁する前に、息子に自宅を、娘に預金を分けたいと希望された方がいました。
病室に呼ばれた行政書士と家族、看護師を含む証人3人が立ち会い、遺言が残されました。
このように、「想いをなんとか形にしたい」その瞬間に寄り添う制度でもあります。
◆ まとめ|もしものときに、伝えられる安心
一般危急時遺言は、命が尽きる間際の最後の意思表示の手段。
準備ができなかった方にとって、残された唯一の選択肢かもしれません。
ただし、制度には細かな要件とリスクもあるため、
元気なうちから、正式な遺言書の準備をしておくことが何より大切です。
「そのときに困らない」ように、
普段から少しずつでも、相続のこと、遺言のことに目を向けていきましょう。

