― 手書き遺言の落とし穴とその克服法 ―
人生の終盤に、自分の想いを大切な人に託す「遺言」。中でも「自筆証書遺言」は、最も身近で手軽な方法とされています。しかしその「手軽さ」には、思わぬ落とし穴が潜んでいることをご存知でしょうか。
この記事では、自筆証書遺言のメリットとデメリットを整理し、その弱点を補う方法として「公正証書遺言」の有効性についても解説します。
1.自筆証書遺言のメリット
● 誰でもすぐに作れる
自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば自宅で書くことができます。特別な費用や手続きも不要で、「思い立ったときに書ける」気軽さが大きな魅力です。
● 内容を自由に決められる
遺言者本人が自分で書くため、財産の分け方だけでなく、家族へのメッセージや気持ちを添えることもできます。フォーマルでなくとも、自分の言葉で伝えられるという柔軟さがあります。
● 書き直しも簡単
気が変わったり、家族関係が変化したりしても、新しい遺言を書けば古いものを取り消すことができます(ただし「取消しの意思表示」が必要です)。
2.しかし…見落とされがちな自筆証書遺言のデメリット
● 法的要件を満たさないと無効になる
2020年以降、一部ワープロが可能になったとはいえ、重要な部分は「全文自筆」が原則。日付や署名の記載が漏れていた、訂正の仕方が誤っていた――こうした理由で、無効と判断されるケースが実際にあります。
● 紛失や改ざんのリスクがある
自宅で保管することが多いため、誰かに見つかって処分されてしまったり、偽造や改ざんされたりする危険があります。せっかく書いた遺言が、見つからずに終わることも。
● 家庭裁判所での「検認」が必要
自筆証書遺言は、たとえ有効に作られていても、相続手続きを始める前に家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。この検認には数週間~数ヶ月かかることもあり、残された家族にとって大きな負担となります。
3.「自筆」だけでは守りきれない大切な想い
遺言は、自分が亡くなったあと、家族に確実に意志を伝えるためのものです。しかし、書いた遺言が無効だったり、見つからなかったりしては意味がありません。
多くの方が「とりあえず書いておけば大丈夫」と思いがちですが、形式不備や保管トラブルによって想いが届かない例が後を絶ちません。
4.公正証書遺言で補える自筆の弱点
こうした自筆証書遺言のリスクを補ってくれるのが、「公正証書遺言」です。
以下のような特徴があります:
● 法的ミスの心配がない
公証人が内容をチェックしながら作成するため、形式不備によって無効になるリスクがほぼありません。
● 紛失・改ざんの恐れがない
原本は公証役場で厳重に保管されるため、万が一ご本人の控えが紛失しても、手続きに支障が出ることはありません。
● 検認が不要
相続開始後、すぐに遺言の内容をもとに手続きを進めることができ、残された家族の負担が軽減されます。
5.まとめ:大切なのは「残すこと」ではなく「確実に伝わること」
自筆証書遺言は、コストがかからず手軽な方法です。しかし、手軽さゆえに生じる法的リスクや実務上の不安も無視できません。
特に、相続を巡るトラブルや手続きの煩雑さを避けたい方にとっては、公正証書遺言の「確実性と安全性」が何よりの安心材料になるはずです。
遺言の目的は、あなたの想いを確実に届けること。
そのためには「書くこと」だけでなく、「正しく残すこと」も意識してみませんか?

