「“書いてあるのに揉める”のはなぜ? ─ 財産目録のミスが招いた遺産トラブル」


【想定事例】

Lさん(79歳)は、公正証書遺言を作成し、「長女Mさんに自宅を、長男Nさんにそれ以外の財産を」と分ける内容を明記していました。
遺言には財産目録も添付されており、次のように記載されていました。

  • 自宅土地建物(〇〇市△丁目…):長女M
  • 普通預金(〇〇銀行××支店・口座番号略):長男N
  • 有価証券(××証券会社・口座番号略):長男N

しかし、Lさんの死後、実際に遺された財産を確認したところ、

  • 不動産登記簿に記載された地番と遺言上の住所表示が微妙に異なっていた
  • 記載された普通預金口座は、既に解約済で残高ゼロ。新たな口座に資金を移していた
  • 有価証券も一部は売却されており、記載内容と現実が一致していなかった

これにより、Nさんは「自分に相続された財産が実質的にほとんど存在しない」と主張。Mさんは「不動産だけ受け取って、不満が出るのはおかしい」と反論し、激しい口論に発展。
最終的に遺言の有効性をめぐり、家庭裁判所に遺言無効確認の訴えが提起される事態となりました。


【問題点】

  • 財産目録の記載が不完全・不正確だったことで、実際の相続と齟齬が生じた
  • 特に不動産や金融資産は、記載時から状況が変化しやすく、誤解のもとになる
  • 公正証書であっても、「財産目録の記載が信頼性を損なう」と無用な紛争を生むことがある

【教訓と提案】

▼こうしたケースでは:

  • 財産目録は、記載内容を正確に、登記簿・通帳・証券残高などを参照して作成することが重要
  • 財産の変動リスクを考慮し、
    →「内容の変化があってもこの範囲を相続させる」など包括的な記載を含める
    「目録は参考資料であり、分割の意思は本文に従う」といった注記を加えることも有効
  • 定期的な見直しや、必要に応じた遺言の更新も必要

また、目録作成を行政書士や専門家に依頼することで、形式的・実質的な正確性を担保できます。


【結び】

公正証書遺言は法的に強力な手段ですが、記載内容のズレや不備があると、その効力も曖昧になってしまうことがあります。
特に財産目録は、実務的な精度が相続の現場で問われる部分。想いを正しく遺すためにも、「書けば安心」ではなく、「伝わる・実行される」遺言を目指すべきです。

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