――“まだ大丈夫”と思っていたら、気づけば手遅れに
事例概要
Tさん(78歳・男性)は、長年一人暮らしをしており、近くに住む姪(妹の子)が生活の手伝いをしてくれていました。Tさんには結婚歴がなく、子どももいません。
「いずれは世話になっている姪に財産を渡したい」と周囲には話していたものの、遺言書の作成には踏み出していませんでした。
あるときTさんが物忘れや失語症の症状を示し、医師により中等度の認知症と診断されました。その時点で、法的には「遺言能力なし」と判断されてしまい、遺言書の作成は不可能に。
起こったこと
- Tさんが亡くなった後、相続人は兄弟姉妹(すでに他界)に代わって、甥や姪など複数名に分散
- 特に付き添っていた姪が相続分を多く得られる制度的根拠はなく、全員で均等に分ける形に
- 姪は「最期まで面倒を見ていたのに…」とショックを受けたが、法的には抗えなかった
- 相続人同士の連絡がつかず、遺産分割協議も難航
公正証書遺言があれば防げたこと
- 「姪に全財産を遺贈する」「○○団体に寄付する」といった意思表示が明確に反映できた
- 認知症発症前に作成しておけば、確実な遺産の承継が可能
- 公証人による作成のため、遺言能力に疑義が出づらく、トラブルも回避できた
解説
「元気なうちに遺言なんて早すぎる」と思っていても、認知症はある日突然、生活に影を落とします。
一度判断能力が低下すると、もはや**「自分の意思を残す」ことすら叶わなくなる**のです。
特に、お子さんのいない方、法定相続人以外に遺したい方がいる場合は、早めの準備が不可欠です。
次回は、「遺言書の“付言事項”で、相続人同士の関係性を守れたケース」をご紹介予定です。
どうぞお読みください。

