― 外国籍の家族へ財産を残すときに注意したいこと
Oさん(78歳)は、若いころに海外勤務をしていた関係で、長女のLさん(50代)はアメリカ在住。Lさんはアメリカ国籍を取得し、30年以上現地で生活しています。
Oさんは、「娘には十分な生活基盤があるし、国際送金も当たり前の時代だから問題ないだろう」と考え、公正証書遺言で「長女Lに預貯金の半分を相続させる」と記載しました。
しかし、Oさんの死後、想定外の事態が発生します。
日本国内で相続手続きを行うLさんに対して、金融機関は「外国籍の方への相続は追加書類が必要」「在留証明や翻訳書類がないと手続きできない」と対応が煩雑に。Lさんは帰国せずに手続きすることを希望していましたが、複雑な手続きに戸惑い、手続きの完了までに1年以上を要しました。
■ 見落としがちな「国籍・居住地の壁」
日本の公正証書遺言は、外国籍の家族に対しても効力があります。
しかし、実務上は以下のような課題が生じがちです。
- 銀行・証券会社などが求める本人確認書類の取得・翻訳・公証に時間がかかる
- 「居住国の法律」が絡むことで、受け取りの税務申告や送金が複雑化
- 預貯金の解約や不動産登記で、国内代理人が必要になるケースも
結果として、遺言で「相続させる」と明記していても、スムーズに受け取れない可能性があるのです。
■ 回避するためにできた工夫
1.遺言内容の見直しと分配方法の工夫
- 外国在住の相続人には「海外送金しやすい資産」(例:現金・ネット銀行口座)を指定
- 日本国内の相続人と調整し、不動産や複雑な財産は国内居住者に集中させる方法も一案
2.現地での手続きを見据えて準備
- 外国語翻訳付きの遺言文案を事前に準備
- 現地の専門家(弁護士や税理士)とも連携して、相続後の手続き支援を整える
3.「遺言執行者」を指定する
- 特に海外居住者がいる場合、遺言執行者がいることで手続きが格段に進めやすくなる
- 手続きを主導する信頼できる第三者を定めておくことで、家族の負担も軽減
■ 結びに
グローバルな時代、相続もまた国境を超えるものとなっています。
「遺言を書いてあるから大丈夫」と思っていても、**外国籍・国外居住者をめぐる相続には独特の“落とし穴”**が存在します。
だからこそ、遺言を作成する際には、受け取る側の「立場」や「手続きの現実」まで想像して設計することが重要です。
公正証書遺言は強力な制度ですが、その効力を活かしきるには、“書き方”と“相手の状況”を意識した細やかな準備が必要です。

