― 相続人不存在と“想いの行き先”を考える
【想定事例】
Sさん(77歳)は長野県内の団地で一人暮らし。独身で兄弟姉妹もすでに他界しており、
長らく疎遠な親族が一人いるかどうかという状況です。
ご近所づきあいもほどほどで、「自分が亡くなったあとのことは特に考えていない」と話していました。
しかし、ある日体調を崩して入院したSさんは、病室でふと不安を漏らします。
「このまま私が亡くなったら、部屋の荷物は?財産は?誰が処理するんだろう…」
■ 相続人がいなければ「国のもの」になる?
民法では、相続人が存在しない場合、財産は**最終的に国庫に帰属する(=国のものになる)**と定められています。
つまり、Sさんのように相続人がいない場合、何も備えなければ、
自分の財産は国に引き取られ、誰にも意思を伝えることなく消えてしまうのです。
■ 問題点①:死後の事務が宙に浮く
相続人がいないと、以下のような“身辺整理”もスムーズに進みません。
- 部屋の片付け・契約解約・葬儀の手配などを誰がやるのか不明
- 公正証書遺言がなければ、誰も財産に手を出せず、手続きが長期化
- 最終的には「相続財産管理人」が選任され、手続きに時間と費用がかかる
■ モデル遺言書(一部抜粋)
第〇条 遺言者の死亡後、火葬・納骨等の一切の手続きは、知人Tに委ねる。
第〇条 Tに対し、葬儀および死後事務の実費相当額として100万円を遺贈する。
第〇条 残余の財産は、公益財団法人Uに寄付する。
付言事項:私の人生の終わりに関わってくれる人へ、心からの感謝を込めてこの遺言を記します。
■ 対応の工夫①:死後事務の委任と遺贈
信頼できる知人や支援者がいる場合には、
- 死後事務委任契約を公正証書で結ぶ(死後の手続きの実行を託す)
- **その人に遺贈(報酬的な意味も含めて)**を行うことで、実行性を確保
といった方法が取れます。
■ 対応の工夫②:公益活動・地域団体への寄付
血縁がなくても、自分が支援したい対象があるなら、
- 医療や福祉の公益法人への遺贈寄付
- 地元のNPO・地域福祉団体・学校等への寄付
- ペット関連施設・動物保護団体など、自分の価値観とつながるところへの継承
という選択肢もあります。
遺言に明記することで、“想いの行き先”を自分で決めることができるのです。
■ 結びに ―「相続人がいない」=「何もできない」ではない
相続人がいないからといって、すべてを諦める必要はありません。
むしろ、そういう人こそ、自分の希望や意思を明文化することが重要です。
人生の最後に誰かの役に立てる、
そんな“温かい終活”を、遺言という形で残してみませんか?

