【想定事例】「がんの進行とともに、残す覚悟が決まった」
~治療中の決断が家族を支えた公正証書遺言~
長野市に住む70代のFさんは、前立腺がんと診断されました。
当初はホルモン療法と放射線治療で効果が見られましたが、
1年後には骨転移が確認され、「進行性前立腺がん」と診断が変更されました。
医師からは「数年単位での予後」と伝えられたFさん。
その言葉を聞いて最初に浮かんだのは、「残される家族のこと」でした。
❖ 心に残っていた“あの時の争い”
Fさんの兄は、何の準備もないまま亡くなり、
残された家族が不動産と預金をめぐって争った経験がありました。
「俺はそうはならないようにしよう」
「今は元気だからこそ、できることがある」
そう語ったFさんは、行政書士に相談し、公正証書遺言の作成を決意しました。
❖ 内容と背景
Fさんには妻と2人の子どもがいました。
主な資産は自宅の土地建物と、退職金を含む預金。
次のような内容で遺言を作成しました:
- 自宅とその敷地は妻へ相続させる
└ 今後も安心して住み続けられるように - 預貯金のうち一部を長女・長男に均等に分ける
└ 将来の生活支援を考慮して - 遺言執行者に行政書士を指定
└ 相続手続きがスムーズに進むように
さらに、遺言には自筆の「家族へのメッセージ」も添えられました。
❖ 「書いておいてよかった」の言葉
作成から2年後、Fさんは自宅で最期を迎えました。
悲しみに包まれながらも、家族は遺言の存在に助けられました。
- 妻は不動産の名義変更をすぐに行えた
- 子どもたちは分配の方針に納得し、争いは一切なし
- 遺言執行者の手続きで、煩雑な事務も迅速に終了
長女はこう語ってくれました:
「父は最期まで“家族に迷惑をかけたくない”と言っていました。
遺言がその言葉どおりのかたちになっていて、感謝しかありません」
❖ 前立腺がんのような“時間のある進行性がん”だからこそできること
進行性前立腺がんは、急激に命を脅かすわけではありません。
だからこそ、本人の意思をじっくり整理し、法的に準備する時間があります。
- 元気なうちに意思をまとめ
- 判断能力が確実な時期に手続きを済ませ
- 家族との話し合いも重ねながら形に残す
「がんになってからでも、間に合う」――
それがこの事例からのメッセージです。
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