【医療と法務|前立腺がん 第9回】

【想定事例】「延命よりも、自分らしい最期を」

~意思決定を支えた遺言・事前指示・死後事務~


長野市のJさん(80代・男性)は、前立腺がんの転移が進行し、医師から「延命治療の選択」を提案されました。
しかしJさんは迷わずこう言います。

「延命よりも、痛みの少ない、穏やかな最期を迎えたい」

そう話すJさんの希望は明確で、**「自分らしい最期の迎え方を準備しておきたい」**というものでした。


❖ ご相談時の状況

  • 医師からは「今後は抗がん剤も効果が乏しくなる可能性が高い」と説明を受けていた
  • 一人暮らしで身寄りは少なく、最期をどう迎えるかに強い不安があった
  • 相続に関する希望は既に整理していたが、「死後のこと」までは準備できていなかった

❖ Jさんが選んだ3つの備え

✅ 1.公正証書遺言

  • 財産の多くを、若い頃世話になった姪に相続させる内容
  • 介護施設の入居一時金や生活残高の処理も含めて指定

✅ 2.事前指示書(リビング・ウィル)

  • 延命措置の拒否、人工呼吸器や経管栄養の不使用を明文化
  • 「可能な限り緩和ケアを優先」と明記
  • かかりつけ医と共有し、施設側でもファイル保管

✅ 3.死後事務委任契約

  • 死後の葬儀、施設退去、病院や市役所への手続きなどを一括委任
  • 遺言執行者とは別に、死後事務を担う専門職後見人を指定

❖ 最期まで「納得」をもって

Jさんはその後、緩和ケア病棟へ転院。
延命治療を避けながらも、痛みのコントロールと家族との面会に重点を置いた穏やかな療養を送りました。

「全部決めておいたから、何も悩まずに済んだ。
家族に負担をかけず、安心して“さよなら”できる。」

Jさんのご逝去後も、事務手続きは契約に基づいて円滑に進められ、姪からは「伯父の想いがすべて形になっていた」との声が寄せられました。


❖ 延命治療に“同意しない”という選択も備えのひとつ

  • 法律的には、「事前指示書」による延命措置拒否は拘束力を持ちません
  • しかし、医師や家族に意思を明確に伝えるための重要な手段です
  • 「遺言」と「死後事務」とあわせて活用することで、“生と死の自己決定”を実現できます

❖ 医療と法務が連携することで支えられる“最期の希望”

終末期をどう過ごすかは、法律の問題ではなく、“生き方”の問題でもあります。
しかし、準備が整っていれば、本人の意志を実現することは可能です。


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