― 時代遅れの遺言が招いた“想定外”の争い
【想定事例】
Yさん(85歳)は10年前、公正証書遺言を作成しました。
当時の内容は、妻Zさんと、子ども2人(長男Aさん・長女Bさん)への法定相続分に準じた分配。
しかし、その後――
- 長女Bさんは結婚して遠方に移住
- 長男Aさんは会社を辞めて実家でYさんと同居し、介護も担当
- 妻Zさんは3年前に他界
にもかかわらず、Yさんは遺言の見直しをしないまま亡くなりました。
■ 相続は“最新の状況”で進められる
Yさんの遺言には、妻Zさんが全体の半分を相続すると明記されていましたが、
Zさんは既に他界しているため、その分は遺言の効力が及ばず“遺産分割協議”が必要に。
また、長男Aさんは介護の貢献から「寄与分」を主張し、
長女Bさんは「遺言通りじゃないの?」と反発。
「私は家も飛行機で往復しながら看てたのに…
兄のほうが多く取るのは不公平じゃない?」
こうして、10年前には想定していなかった感情と状況のズレから、相続争いが勃発してしまいました。
■ モデル遺言書(修正前の一部抜粋)
第〇条 遺言者の財産のうち、1/2を妻Zに相続させる。
残余の財産は、長男Aと長女Bに各1/2の割合で相続させる。
※この遺言は、妻が存命であることを前提に作成されています。
■ 遺言の「更新漏れ」は大きなリスク
遺言書に有効期限はありません。
ただし、本人の意思や生活状況が変われば、内容が現実に合わなくなることは大いにあり得ます。
以下のような変化があったときは、必ず見直しを検討すべきです。
- 相続人の死亡・疎遠化・生活環境の変化
- 生前贈与や相続税対策による資産構成の変化
- 誰かが介護や看病で大きな役割を果たした
- 想定していなかった人に託したくなった(例:孫・施設・団体等)
■ 対応の工夫①:節目ごとの点検を習慣に
- 退職、配偶者の死、同居の開始・終了など
- 5年に1度は「今のままでよいか」を確認する
- 公証人や行政書士との面談で、**“遺言の健康診断”**を
■ 対応の工夫②:付言事項で背景を残す
たとえ内容が古くても、付言事項に「なぜこの配分にしたか」を記しておけば、誤解や不信の緩和につながります。
また、見直す際にも「前回の遺言との関係」や「想いの継続性」を意識して構成することが大切です。
■ 結びに ― 遺言は“書いて終わり”ではない
人の暮らしが変わるように、
遺言の内容も“今の自分”に合わせて育てていくべきものです。
何かを決断した「その時の想い」は、年月とともに薄れてしまうこともあります。
だからこそ、“未来に通じる想い”であるために、
遺言は定期的な見直しで守っていきましょう。

