― 不動産の記載ミスが招いた遺言の無効リスク
【想定事例】
Sさん(84歳)は、長女Tさんに実家の土地と家を遺したいと考え、
自筆証書遺言で次のように書き残しました。
私の持っている土地と建物を長女Tに相続させる。
令和4年3月1日
S(署名・押印あり)
しかし、Sさんの死後、法務局で相続登記の手続をしようとしたところ、
担当者からこう言われました。
「どの不動産を指しているのか特定できません。登記はできませんね」
■ 遺言に必要な「特定性」とは?
不動産は、登記簿に記載されている所在地・地番・家屋番号・構造・面積など、
法律上の“正確な記載”が求められます。
上記のように「私の土地」「実家」など曖昧な表現では、どの物件かを特定できず、無効または執行不能になることがあるのです。
■ モデル記載例(登記可能な表現)
所有する長野県長野市〇〇1丁目12番地所在の土地(地番:〇〇番〇、宅地、200㎡)および、
同地所在の建物(家屋番号:〇〇番〇、木造2階建、延床面積100㎡)を、長女Tに相続させる。
このように、登記簿に基づく正確な情報で表記することが大切です。
■ 対応の工夫①:登記事項証明書を確認する
- 遺言作成前に、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得
- 所在地・地番・家屋番号・面積などを正確に記載
- 地番と住居表示(住所)は異なることに注意!
■ 対応の工夫②:公正証書遺言にすれば安心
- 公証人が登記事項を確認しながら作成するため、記載ミスがほぼない
- 将来、登記手続の際にもトラブルが少ない
- 法務局の登記官が信頼する書類としても扱われる
■ 結びに ― 不動産は“文字一つ”が命取り
遺言による相続登記は、遺言内容が正確であることが前提です。
文字の間違いや省略、曖昧な表現があると、せっかくの遺言も“意味をなさない紙”になってしまうこともあります。
土地や家を誰かに託したいなら、
一字一句まで、プロのチェックを受けたうえで作成することが安心です。

