― 付言事項がかえってトラブルの火種に
【想定事例】
Uさん(77歳)は、夫を亡くした後、長女Vさんと二人暮らし。
長男Wさんとは10年以上疎遠でした。
遺言で「すべての財産をVさんに相続させる」と決め、公正証書遺言を作成。
その中に次のような付言事項を書き加えました。
長男Wには、長年連絡もなく心配ばかりかけられました。
このような結果になったのは当然のことです。
Uさんの死後、遺言は問題なく執行されましたが、Wさんは大きく反発。
「そんなふうに思われていたのか…。
財産は仕方ないとしても、言われっぱなしじゃ納得できない」
Wさんは「感情的な中傷に当たる」として、付言の内容の削除や精神的苦痛に関する主張を始めるなど、
家族の関係修復は完全に不可能となってしまいました。
■ 付言事項とは? その役割と効力
付言事項とは、法的拘束力はないものの、
「なぜこのような遺言内容にしたのか」「家族へのメッセージ」などを伝える欄です。
本来は、**相続人の理解と納得を得るための“想いを伝える場”**ですが、
書き方によっては、感情の対立を刺激するリスクがあります。
■ 注意したい付言の落とし穴
- 他者への批判や否定的な評価を書くと、残された者が深く傷つく
- 「誰が悪い」「当然の報い」などの文言は、争いを正当化するように見える
- 意図しなくても、故人の“最期の言葉”として強く残る
■ 対応の工夫①:伝えるなら“感謝と希望”を
付言は、家族にとって遺言者の“最後のメッセージ”。
次のように、前向きで温かな言葉に変えることが、円満な相続への鍵です。
- 「それぞれの人生を歩んできました。感謝しています」
- 「この遺言が、家族の今後の関係の支えになることを願います」
■ 対応の工夫②:書くかどうか迷う場合は、専門家と相談を
- 本当に書くべきか、表現に配慮が必要かどうか、
- 自筆ではなく公正証書遺言で、第三者の視点を挟みながら作成する
これにより、主観が強すぎる記述を防ぎ、冷静な言葉で想いを届けることが可能です。
■ 結びに ― 付言は「争いを和らげる鍵」にもなる
付言事項は、相続内容に対する不満をやわらげたり、
故人の想いを通じて家族の絆を保つ手段にもなり得ます。
しかしその一方で、「書き方次第でトラブルの原因にもなる」という事実を忘れてはなりません。
“感情を吐き出す場”ではなく、“想いを届ける場”として丁寧に言葉を選ぶ。
それが、遺言における付言事項の正しい使い方です。

