― 相続人以外への“遺贈”が招いた兄弟の亀裂
【想定事例】
Xさん(80歳・女性)は、夫と死別し、長女Yさん・長男Zさんの2人の子どもがいます。
晩年は体調を崩し、近所に住む元看護師のAさん(70代)が週3回の買い物・通院同行など、無償で支えてくれていました。
Xさんは感謝の気持ちから、遺言公正証書に次の内容を残します。
第1条 長女Yに全財産の50%を相続させる
第2条 長男Zに全財産の50%を相続させる
第3条 Aさんに金100万円を遺贈する
第4条 Aさんへの遺贈は特別の感謝の念に基づくものである
【相続発生後】
遺言通りに遺贈の手続きが進む中、Zさんが激しく反発。
「相続人でもない他人に財産をやるなんて…。母は騙されていたのでは?」
「遺言の無効を主張して争う!」
Yさんは冷静に対応しようとしたものの、Zさんは遺言無効の調停を申し立てる構えに。
結果として、相続手続きは1年以上中断され、家族関係も決定的に崩れてしまいました。
■ “遺贈”とは?|基本的な位置づけ
- 遺贈とは、相続人以外の第三者に財産を与える行為。
- 法的には有効だが、相続人の感情的な反発や誤解を招きやすい面があります。
■ よくある誤解とその背景
- 相続人の中には、「他人に財産をやるのはおかしい」「遺産を奪われた」と感じる人もいます。
- 特に法定相続分を下回る形で相続人の取り分が減る場合、強く反発される傾向があります。
■ 対応の工夫①:遺贈内容は慎重に検討
- 金額が大きい場合は理由や経緯を明記した付言事項を添える
- 公正証書遺言であれば、遺言作成時の本人の意思を証明しやすくなる
■ 対応の工夫②:あらかじめ家族に伝えておく
- 「こういう理由で、感謝の気持ちを表したい」と事前に話しておくことで、
遺言を見て初めて知る、という驚きや反発を防ぐことができます。 - 難しい場合でも、専門家を通じて“遺言の内容説明”を行う方法もあります。
■ 対応の工夫③:感謝の気持ちは“生前贈与”も選択肢
- 相続のタイミングではなく、生前に一定の範囲で贈与しておく方法もあります。
- 贈与税の基礎控除(年間110万円)などを活用しながら、
将来のトラブルの芽を摘むことができます。
■ 結びに|善意の遺贈が、家族の対立を生まないように
相続人以外の方への感謝の気持ちは、決して責められることではありません。
しかし、その想いが誤解や不信を生むこともあるのが、相続の難しさです。
だからこそ、
“遺贈の仕方”にも戦略が必要です。
・家族への説明
・付言による補足
・遺言形式の選択
・生前の準備
これらを意識することで、遺贈が本来の役割である「感謝の形」として受け入れられる可能性が高まります。

