「家業を継ぐ長男と、自宅で暮らす長女に」

― 事業用資産と生活基盤を分けて託す遺言設計


【想定事例】

Mさん(74歳)は、長野県内で農業を営み、農地・倉庫・農機具を保有しています。
長男Nさん(40代)は就農して農業を引き継ぐ意思を示しており、
長女Oさん(40代)は実家で両親と同居し、介護や家事を担ってきました。

Mさんは、家業の継承と長女の生活の安定を両立させるため、
農地や設備は長男に、住居は長女に遺す内容の遺言を公正証書で作成することにしました。


■ モデル遺言書(公正証書遺言の想定文)


第1条 長男Nに対し、以下の財産を相続させる。
 一.長野県〇〇市所在の農地(地番:〇番、〇㎡)
 二.同所所在の倉庫及び農業機械一式
 三.農業用口座の預貯金(〇〇銀行〇支店 普通預金口座番号×××)

第2条 長女Oに対し、以下の財産を相続させる。
 一.長野県〇〇市所在の宅地及び自宅建物(地番・家屋番号略)
 二.生活費補填として、現金300万円

第3条 本遺言の遺言執行者として、行政書士または弁護士Pを指定する。

付言事項:
Nには家業を継いでもらい、Oには長く支えてもらった生活の場を守ってほしい。
互いに支え合いながら、家を大切にしていってくれることを願っています。


■ 解説|相続設計の工夫ポイント

① 「用途」に応じて分ける配分設計

  • 農業を継続させるため、農地と設備は一体で長男に
  • 実家で暮らす長女には、住宅と生活補助の現金を遺す

→ 相続人の立場や生活スタイルに応じた**“実効性ある配分”**となる

② 家族の納得を得やすい「ストーリー性」

  • 介護や家業継承など、それぞれが役割を果たしてきたことが明確であり、
     不公平感を抑える設計となっている

■ 対応の工夫|事業用資産が絡む遺言を作成する際のポイント

  • 農地の相続後、農地法に基づく名義変更や農業委員会への届出が必要
  • 農機具などの動産は、目録を添付して確実に特定する
  • 住まいと農地が混在している場合、土地の用途・地目の確認を忘れずに

■ 結びに

相続は「公平に分ける」ことが必ずしも正解ではありません。
家族の役割や生活の背景に配慮し、**“活かされる財産配分”**を設計することが、
争いを防ぎ、家族の未来を支える大きな鍵となります。

自分の想いや役割分担が正しく伝わるよう、
遺言は“物の配分”だけでなく“想いの配慮”を込めて残しましょう。

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