「前妻の子と、今の家族の相続をどう分ける?」

― 再婚家庭における遺産分配の調整モデル


【想定事例】

Sさん(72歳・男性)は、前妻との間に長男Tさん(40代)が一人います。
その後再婚し、現在の妻Uさんとの間には次女Vさん(30代)と三女Wさん(20代)がいます。

Sさんは前妻と離婚後、Tさんとは疎遠でしたが、法的にはTさんもれっきとした相続人です。
「今の家族に生活の基盤を守ってほしい」という想いと、「Tさんの権利を完全には無視できない」という葛藤の中、Sさんは調整型の遺言書を作成することにしました。


■ モデル遺言書(公正証書遺言の想定文)


第1条 妻Uに対し、長野市〇〇所在の自宅不動産一式を相続させる。
第2条 次女Vに対し、普通預金のうち400万円を相続させる。
第3条 三女Wに対し、普通預金のうち400万円を相続させる。
第4条 長男Tに対し、現金200万円を特別に遺贈する。
第5条 本遺言の遺言執行者として、行政書士または弁護士Xを指定する。

付言事項:
長男Tへ。長らく会うことはできなかったが、父としての責任を果たす形でこの遺言を残す。
今の家族には、これからの生活を守るための資産を多く遺すが、あなたの存在も忘れたことはない。


■ 解説|再婚・非同居の相続人がいる場合の配慮点

① 法定相続人を「排除せずに配分調整」する

  • 長男Tを除外せず、金額を抑えた遺贈として明記
  • 「遺留分」を意識しつつ、トラブルの予防策として現金を提示

② 「付言事項」で感情面の補足を行う

  • 書面だけでは伝わらない想いを残すことで、
     相続人が内容の背景を理解しやすくなる
  • 特に疎遠な相続人に対しては、配慮ある言葉が和解の一歩となることも

■ 対応の工夫|このようなケースで検討すべきこと

  • 生前に遺言の存在を伝えるかどうか慎重に判断(感情面の配慮が必要)
  • 財産の種類ごとに分けやすい構成にし、「誰が何を受け取るか」を明確に
  • 公正証書遺言により、法的リスクや検認の手間を最小限に

■ 結びに

再婚や複雑な家族構成は、相続において誤解・反発・争いの火種になりやすいテーマです。
しかし、想いと配慮を込めた遺言書を残すことで、
すべての関係者が納得できる相続へとつなげることができます。

「関係が薄いから書かない」のではなく、
「あえて書いておく」ことが、家族全体の安心につながります。

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