「孫に直接遺したい」

― 代襲相続と教育資金遺贈を組み合わせたモデル遺言書


【想定事例】

Mさん(78歳・女性)は長男を3年前に亡くしました。
長男には2人の子(Mさんの孫Aさん・Bさん)がいます。
次男と三男は健在で、それぞれ家庭を持っています。

Mさんは長男を早くに亡くした悲しみと同時に、
「孫たちのこれからの学費や生活を少しでも支援したい」と考えるようになりました。
しかし、相続法上は孫は代襲相続人となるとはいえ、
他の相続人(次男・三男)との公平性をどう保つかが課題でした。


■ モデル遺言書(公正証書遺言の想定文)


第1条 私の財産のうち、長野市〇〇所在の自宅不動産を次男Cに相続させる。
第2条 同市△△所在の土地を三男Dに相続させる。
第3条 長男A(故人)の子である孫Eおよび孫Fに、それぞれ現金300万円を遺贈する。
第4条 上記孫への遺贈分については、教育資金として使用することを希望する。
第5条 本遺言の執行者として行政書士または弁護士Xを指定する。

付言事項:
長男の代わりに孫たちがしっかりと成長してくれていることを誇りに思います。
直接の支援が難しくなった今、せめて学びの助けとして使ってもらいたい。
兄弟たちもどうか理解してほしいと思います。


■ 解説|代襲相続を踏まえた遺言構成の工夫

① 「代襲相続」と「遺贈」を組み合わせて調整

  • 代襲相続は法定相続として当然発生しますが、
     他の相続人とのバランスを考慮し、明確な金額指定で遺贈を加える形も有効。
  • 「教育資金目的の遺贈」として意思を明記することで、使途への意図が伝わる。

② 「公平性」と「思いやり」の両立

  • 遺贈金額を適切に設定することで、
     次男・三男への相続とバランスを保ちやすくなる。
  • 公平とは「平等」ではなく、状況に応じた納得感のある配分

■ 実務上のポイント

  • 教育資金の遺贈は条件付き遺贈とするよりも、希望(付言)として残す方が安全。
  • 相続人間で教育費の使途を巡る誤解を防ぐために、
     付言事項の文面を丁寧に整えることが重要。
  • 遺言執行者を指定し、実際の資金引き渡しを公正かつ確実に管理

■ 結びに

「孫に直接遺す」という発想は、単なる金銭支援ではなく、
“世代を超えた思いやり”の形として注目されています。
法定の枠組みだけに頼らず、遺言で明確に意思を示すことで、
家族の絆を次の世代へつなぐ設計が可能になります。

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