Ⅰ.はじめに|がんの告知と「親に伝えるかどうか」の悩み
がんの診断を受けたとき、多くの方が「親にはどう伝えたらいいのか」と迷います。
特に、親が高齢であったり、心配性であったりする場合、「余計な不安を与えたくない」と感じる方も少なくありません。
しかし、親子の距離や生活状況によって「伝えるか・伝えないか」の判断や、伝え方のポイントは異なります。
ここでは、心理的な側面とあわせて、家族としての向き合い方のヒントを整理していきます。
Ⅱ.がん患者の心理状態と「伝えること」の意味
がんの告知後は、心の中でさまざまな感情が揺れ動きます。
- 「自分のことで精一杯」になる時期
- 「支えがほしい」と感じる時期
- 「周囲にどう話すか迷う」時期
伝えることは、親を心配させるリスクと同時に、支えを得る機会にもなります。
どちらが良い・悪いではなく、「自分がどのように支えられたいのか」を軸に考えることが大切です。
Ⅲ.話す前に整理しておきたい心構え
- 自分の気持ちを確認する
― どんな不安を感じているか、何を支えてほしいのかを整理しておきます。 - 話す目的を考える
― 「心配をかけないように」か「一緒に向き合いたい」か。目的によって伝え方は変わります。 - 医療情報を自分なりに理解しておく
― 病名・治療方針など、質問された時に説明できる範囲を整理しておくと安心です。
Ⅳ.同居している親に話す場合のヒント
- 日常の中で自然に話せるタイミングを選ぶ
- 生活の変化(通院・入院など)を見越して早めに共有
- 医師の説明を一緒に聞くことで理解を深められる
- 「大丈夫だよ」と励ましすぎるより、「一緒に頑張ろう」という共感を大切に
Ⅴ.離れて暮らす親に話す場合のヒント
- 電話やオンラインではなく、可能なら対面で話す
- 感情的な反応を受け止める準備をしておく
- 距離があるからこそ、治療計画やサポート体制を具体的に伝える
- 「自分の生活も心配しないで」と安心材料を添える
Ⅵ.高齢の親に話すときのヒント
- 医療用語は避け、分かりやすい言葉で
- 一度にすべてを話さず、段階的に伝える
- 親自身の健康状態に配慮し、静かな環境で話す
- 「長生きしてね」など、前向きな言葉を添えることで心を落ち着かせやすく
Ⅶ.パートナーの親に話すときのヒント
- パートナーと伝える順番・内容を事前に相談
- 自分の病状説明よりも、「今後の生活をどう考えているか」を中心に
- 相手の家族がサポートしやすいよう、感謝の言葉を添える
Ⅷ.話した後のケア|支え合う関係を保つために
- 親の反応に「期待しすぎない」
- 話したことで負担を感じたら、しばらく距離を置いてもよい
- 医療者や相談支援センター、心理士など専門家の支援も利用できる
- 「話して終わり」ではなく、「どう支え合うか」を少しずつ話し合うことが大切
Ⅸ.どうしても話せない場合の選択肢
「親にはどうしても言えない」という選択も尊重されるべきものです。
その場合は、信頼できる友人・配偶者・医療ソーシャルワーカーなど、別の支えを確保しておきましょう。
また、将来の手続きや意思表示に備えて、遺言書や医療意思の記録を準備することで、
「自分の思いを伝える」別の方法を持つことも可能です。
Ⅹ.心のケアと行政書士の関わり方
行政書士は、医療や家族の事情に配慮しながら、
次のような法的サポートを通して安心を支えることができます。
- 医療意思(延命・治療方針)の書面化支援
- 成年後見・任意後見の準備
- 遺言書の作成支援(家族へのメッセージを含めた内容)
法律文書の整備は、「伝えにくい気持ちを形にする」手段でもあります。
Ⅺ.まとめ|「話すこと」は勇気と準備の両方が必要
がんという現実を親に伝えることは、とても勇気のいる行動です。
しかし、「どのように話すか」「どこまで話すか」を自分のペースで決めてよいのです。
伝えることも、伝えないことも、「家族を思う気持ち」から始まっているということを忘れずに。
そのうえで、必要な支援や法的準備を整えることで、心にも少し余裕が生まれるはずです。
