想定ケース|終末期に口頭で遺言を伝えた80代男性の例
【背景】
長野県内の自宅で暮らす80代男性。
末期がんと診断され、余命宣告を受けて在宅療養を開始。
意識ははっきりしていたものの、体力低下で筆記や公証人との面談は困難でした。
男性は家族に対して口頭で意思を伝え、
「財産は長男に全部渡す、骨董品は孫に」と希望。
家族も「お父さんの意思だ」と理解していました。
【落とし穴】
終末期の口頭遺言(危急時遺言)には、法的な要件があります(民法977条~979条)。
- 証人が2名必要
- 遺言内容を口述して記録
- 遺言者が死亡後、20日以内に家庭裁判所で確認
この男性の場合、証人は1名しか同席できず、
さらに記録も手書きメモのみで正式な書面ではありませんでした。
そのため、相続発生後、他の親族から「口頭の遺言は無効ではないか」と争われる事態になりました。
【医療面の確認】
医師の診断によると、意識は清明で判断能力もあったものの、
体力低下と痛みの影響で長時間の会話や筆記が困難な状況でした。
危急時遺言として作成できる条件は整っていたものの、
証人の人数や家庭裁判所での手続きが不十分 であったため、形式上の不備が生じた事例です。
【法的リスク】
口頭遺言は、形式の不備や証人不足により、
- 無効判定を受ける
- 遺言内容が争われる
- 家族間での紛争が長引く
といったリスクがあります。
形式的な要件を満たすことが、後々の争いを防ぐ最大のポイント です。
【医療と法務の接点】
終末期遺言では、医療状況を踏まえて以下を確認することが重要です:
- 意識・判断能力の確認(医師による診断)
- 証人の確保(最低2名)
- 口述内容の記録と署名・捺印の補助
- 家庭裁判所での確認手続きのスケジュール調整
医療面と法務面を連携させることで、
本人の意思を法的に守る形 を残すことが可能です。
【行政書士ができる支援】
- 危急時遺言に必要な手続きや書類の準備
- 医師・家族・証人への説明・調整
- 作成当日の状況記録(体調・口述内容の確認)
- 家庭裁判所への提出支援
単に「口頭で伝えた」だけでは不十分であり、
専門家の関与によって、有効性を高める工夫 が求められます。
【まとめ】
⚠️ 終末期の口頭遺言は、体調や状況によって形式の要件を満たせないことがあります。
医療面の確認と法的手続きを慎重に行うことで、
本人の意思を確実に法的に残すことができます。
