【医療と法務|慢性心不全 第2回】

突然の入院で見えてきた「備えていなかった現実」

※本記事は想定事例です

■ 想定事例
70代男性・Aさん。
数年前から慢性心不全と診断され、内服治療を続けながら自宅で生活していました。

普段は会話もしっかりしており、
「まだ自分で何でもできるから大丈夫」
と、法的な備えについては特に考えていませんでした。

ある日、急な息切れと浮腫が出現し、救急搬送。
そのまま緊急入院となります。

■ 入院直後、家族が直面した問題

入院後、医師からは
「今回は重い。しばらくは集中治療が必要」
と説明を受けました。

その直後から、家族は次のような現実に直面します。

・入院費や治療費の支払い手続きができない
・銀行口座の暗証番号が分からない
・定期的な支払い(介護サービス・公共料金)が滞りそう
・今後の治療方針や施設の話を本人と十分に話せない

Aさんは意識はあるものの、
息苦しさや疲労で、落ち着いて判断や説明ができる状態ではありませんでした。

■ 「回復したら考えよう」が招いた空白期間

数週間後、Aさんは回復し一般病棟へ。
一時的に会話もできるようになります。

家族は
「退院して落ち着いたら、いろいろ決めよう」
と考えました。

しかし、退院を目前に再び容体が悪化。
結果的に、判断能力が比較的しっかりしていた期間は、ほんの短期間で終わってしまいました。

この間に、

財産管理を誰に任せるか
今後の医療・生活の希望
万一のときの遺言

といった話し合いは、ほとんどできませんでした。

■ 慢性心不全に特有の「法務の難しさ」

慢性心不全の特徴は、

・元気そうに見える時期がある
・しかし、その状態がどれくらい続くか分からない
・急変すると、判断が一気に難しくなる

という点にあります。

そのため、

「まだ大丈夫」
「次に元気なときに」

と先延ばしにすると、
制度を使えるタイミングそのものを失うことが少なくありません。

■ もし、元気な時期にできていたら

Aさんが、比較的体調の良い時期に

・財産管理委任契約
・任意後見契約
・公正証書遺言

のいずれかを整えていれば、

入院中の支払い
家族による手続き
将来への不安

は、大きく軽減されていた可能性があります。

■ この事例が示す教訓

慢性心不全では、

「判断能力があるかどうか」ではなく
「判断能力が続くかどうか」が重要です。

短い“できる期間”を逃さないことが、
医療と法務をつなぐうえでの最大のポイントになります。

次回は、
慢性心不全と公正証書遺言が特に相性のよい理由について、
制度解説として整理します。


🔗 このシリーズの投稿一覧はこちらから

行政書士事務所FLW 医療と法務
https://asofficeflw.com/category/医療と法務

長野県公正証書遺言作成サポート 医療と法務(想定事例中心)
https://will.asofficeflw.com/category/医療と法務

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です