― どちらを選ぶべきか? ―
「そろそろ遺言を考えたいけど、誰にも相談せずに書けるのでは?」
多くの方がそう考え、自筆で遺言を書く選択肢を検討します。
しかし、遺言は“書けば終わり”ではありません。
今回は、「自分で書く遺言(自筆証書遺言)」と「専門家と作る遺言(公正証書遺言)」を比較しながら、どちらがご自身に合っているかを考えてみましょう。
1.まずは自筆証書遺言の特徴を知る
【メリット】
- 紙とペンがあればすぐに書ける
- 費用がかからない(ほぼ無料)
- 自分ひとりで作成できるため、内容を自由に書ける
【デメリット】
- 法的要件を満たしていなければ無効になる(例:日付の記載漏れ、署名の不備)
- 遺言書の紛失・改ざんのリスクがある
- 相続開始後、家庭裁判所で「検認」手続きが必要
- 内容が適法であっても、争いを防げるとは限らない
2.次に、公正証書遺言の特徴を知る
【メリット】
- 公証人が作成・保管するため、法的に確実
- 検認が不要。すぐに相続手続きに移れる
- 原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクがない
- 内容を専門家と相談しながら決められるので、家族間のトラブル予防にも有効
【デメリット】
- 手数料がかかる(遺産の額に応じて数万円〜数十万円)
- 証人2人の立ち会いが必要(ただし専門家に依頼すれば手配可)
- 作成に数日〜数週間かかることもある
3.ケース別に考える:どちらを選ぶべき?
【自筆証書遺言が向いている人】
- 財産の内容がシンプル(例:預貯金や自宅のみ)
- 相続人が配偶者と子どもだけで関係が良好
- とにかく早く遺言を書きたい
- 費用をかけたくない
ただし、自筆証書遺言保管制度(法務局での保管)を併用することを強く推奨します。
【公正証書遺言が向いている人】
- 不動産や株式、事業など財産が多岐にわたる
- 相続人同士の仲が良くない、あるいは疎遠
- 特定の人に多くの財産を遺したい
- 再婚や前妻の子がいるなど、家族関係が複雑
- 遺言を確実に実現したい
「遺す」だけでなく「揉めないように整える」ことを重視する方に適しています。
4.自分で書くリスクと、専門家の安心
たとえば、100万円の預貯金を「Aに相続させる」とだけ書いた場合――
それだけでも遺言として成立する可能性はありますが、残りの財産は? もし他の相続人が「不公平だ」と主張したら?
法律にのっとっていない遺言は、かえって争いの火種になってしまうことがあります。
専門家(行政書士・公証人)と作成すれば、法的に有効な表現で、トラブルの起きにくい内容に整えることが可能です。
さらに、万が一の時にも家族がスムーズに対応できるよう、公正証書遺言は制度的に守られています。
5.まとめ:あなたの目的は「書くこと」?「遺すこと」?
遺言を書く目的は、「自分の希望を実現し、家族の負担を減らすこと」にあります。
どちらの方法にも一長一短がありますが、
- 費用を抑えて今すぐ書きたい方には自筆証書遺言
- 確実に内容を実現したい方には公正証書遺言
がおすすめです。
最後にお伝えしたいのは、「自筆で始めて、公正証書に仕上げる」という選択もあるということです。
まずは思いを紙に書き出し、その内容を専門家と一緒に整理していくことで、本当に意味のある遺言書が完成します。

