“争族”を避けたがん治療中の遺言作成(※想定事例)
がんの治療中に、自身の体力や時間と向き合いながら「家族のために遺言を残す」ことを選んだ60代男性の想定事例です。兄弟間での争いを未然に防いだ事例として、遺言の大切さを改めて考えさせられます。
闘病中に感じた「兄弟仲の危うさ」
60代の男性Bさんは、膵臓がんのステージⅢと診断され、抗がん剤治療を開始しました。治療の合間に自宅に戻れるものの、体力は徐々に低下していく状態でした。
Bさんには2人の息子がいましたが、長男とは同居、次男とは疎遠になっていました。以前、実家の土地の管理を巡って口論があり、それ以降関係は冷え込んでいたのです。
「俺がいなくなった後、また揉めるんじゃないか……。そう思うと、今のうちにちゃんとしておきたい」
病状の進行とともに、Bさんの中には「遺言を残すべきだ」という気持ちが強くなっていきました。
家族への配慮が形になった遺言内容
Bさんは行政書士に相談し、公正証書遺言の作成に踏み切りました。内容は次のようなものでした:
- 同居して介護を手伝ってくれている長男に、実家の土地建物を相続
- 次男には、現金資産を等分に相続
- 過去の出来事や気持ちを込めた付言事項を明記
(例:「過去の行き違いはあったが、次男の幸せを願っている」)
遺言には、公証人立会いのもとでBさん本人の意思が明確に記録され、効力のある形で残されました。
相続後、「争族」は避けられた
数か月後、Bさんは家族に見守られながら亡くなりました。遺言の内容はスムーズに実行され、特に問題が起きることはありませんでした。
長男は「父がきちんと決めてくれていたから、迷わず手続きできた」と話し、次男は「直接は言われなかったけど、遺言で気持ちが伝わった気がした」と語りました。
感情のわだかまりも、法的な備えで和らぐ
相続トラブルの多くは、「言葉が足りなかった」ことや「意思が曖昧だった」ことに起因します。遺言は、法的に正しいだけでなく、家族に想いを伝える手段でもあります。
「体調がよくないけれど、今ならまだ動ける」
そんなときこそ、遺言作成のベストタイミングかもしれません。
次回は、がんの終末期に備えた「任意後見契約」の活用について、法務的な視点から解説します。
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