【医療と法務|ALS 第8回】

【想定事例】「伝えた“声”が家族を導いた」

~公正証書遺言が実現したALS患者の想い~


千曲市に住むDさん(60代男性)は、ALSと診断された翌年、口述による公正証書遺言を作成しました。
理由は、「自分の気持ちを、確かな形で家族に伝えておきたかったから」。


❖ 病状の進行と決意

Dさんは診断から1年ほどで言葉を発しにくくなり、
家族との会話も文字盤を用いたものに変わっていました。

この時期、Dさんは自宅の相続を巡って不安を抱えていました。

  • 妻と長男が住んでおり、生活の基盤になっている
  • 次男は遠方に暮らしており、将来的な相続トラブルを避けたい
  • 自分の死後も、家族が安心して暮らせるようにしたい

❖ 公証役場での対応

Dさんは、行政書士を通じて、公証役場と打ち合わせ。
音声による発話が難しくなっていたため、文字盤による意思表示を用い、
公証人と2名の証人が丁寧に本人の意思を確認しました。

作成された公正証書遺言には、以下の内容が盛り込まれていました:

  • 自宅の土地建物は妻に相続させる
  • 長男には生活支援の預金を一部
  • 次男には特定の金融資産を指定し、「自宅を継がないことに感謝する」と記載

❖ 家族の反応とその後

Dさんは亡くなったあと、遺言どおりに相続が進み、
家族間でのトラブルは起こりませんでした。

次男は「父の想いを知れてよかった」と語り、
妻と長男は「生活の拠点が守られたことに感謝している」と話しました。


❖ ALS患者が遺言を遺す意義

Dさんのように、ALS患者であっても、
早期に準備し、法的な形で意思を伝えることが可能です。

  • 言葉が出なくても、気持ちは伝えられる
  • 公正証書遺言という方法が、その力になる

ALSの進行は避けられないものですが、
「伝えられなくなる前に、しっかり伝える」ことで、
家族にとっての“道しるべ”を残すことができます。


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