【想定事例】
公正証書遺言が家族の対立を深めてしまったケース
70代のAさんは、公正証書で遺言を作成。配偶者Bさんに全財産を相続させる内容でした。長男・長女には「将来、家を引き継いでくれる長男には遺産を渡したくない」という思いから一切の相続をさせない内容で、その意思を公証役場で明確に伝えていました。
しかし、Aさんが亡くなった後、長女から「父は自分にも何か遺してくれると話していた」と不満が出て、兄妹間でトラブルに発展。遺留分侵害額請求が起き、弁護士を立てた長期の争いとなりました。
【問題点】
- 公正証書遺言という「確定的な形」での意思表示がかえって、残された家族の関係修復の余地をなくしてしまった。
- 遺留分を無視した内容であったため、法的な対抗手段を招いた。
- 本人の意思を尊重しすぎて、感情面での家族の受け止めが無視された構成になっていた。
【教訓と提案】
公正証書遺言は法的に強力な手段ですが、その「強さ」が時として人間関係のしこりを固定化してしまうこともあります。
▼ こうしたケースでは:
- 自筆証書遺言で少し柔らかい表現にする、
- または公正証書遺言を作成するにしても、家族への説明や気持ちのフォローを同時に行うことが大切です。
**「残された人たちが、争わないように」という視点を持つことが、遺言を作成する上で何より重要です。
法律的な正しさと、家族の受け止め方との“両立”**を意識しましょう。
【結び】
公正証書遺言は大きな効力を持つ素晴らしい制度ですが、使い方を誤ると、その「確実さ」が思わぬ摩擦を生むこともあります。
遺言を作成する際は、法的な正当性だけでなく、感情面・家族関係にも配慮しながら、伝え方を工夫することが大切です。
「何を遺すか」だけでなく「どう伝えるか」を考えて、後悔のない遺言づくりを進めましょう。

