「信頼して任せたはずが… ─ 遺言執行者がもたらした混乱」


【想定事例】

Gさん(68歳)は、子どもがなく、配偶者にも先立たれた単身者。
信頼している甥Hさんにすべての相続を託したいと考え、公正証書遺言を作成。内容は、全財産をHさんに遺贈し、さらに「遺言執行者」としてもHさんを指定するというものでした。

しかし、Gさんの死後、状況は一変します。

財産の一部には古いアパートが含まれており、そこには長年住む高齢者や生活困窮者が複数入居。Hさんは「早く現金化したい」と強引に立ち退きを迫り、一部住人や近隣とのトラブルに発展。

また、Gさんの遺言には「寄付したい」と言っていた地元団体への言及がなかったことも重なり、「本当にGさんの意思を尊重しているのか?」と疑問の声が上がるようになりました。最終的に、他の親族から家庭裁判所に「遺言執行者の解任申立て」がなされる事態となりました。


【問題点】

  • 受遺者と遺言執行者が同一人物であることで、客観性や信頼性が損なわれやすい
  • 財産の種類(収益物件や賃貸物件)によっては、執行に専門性や対人調整が求められる
  • 遺言作成時に想定されていなかった社会的影響や倫理的批判が生じることもある

【教訓と提案】

▼こうしたケースでは:

  • 遺言執行者は、信頼だけでなく「適任性(法務・調整能力・中立性)」で選ぶことが重要
  • 公正証書遺言作成時に、弁護士や行政書士などの専門職を遺言執行者に指定する選択も検討を
  • 財産の内容に応じて、複数名を執行者として指定する方法や、分割して役割を与える方法もある

また、「遺言執行者の業務範囲」についてもあらかじめ具体的に記載しておくことで、誤解や逸脱を防ぐことができます。


【結び】

遺言の執行は「手続き」以上に、「想いの伝達」であり、「誤解されない実行」が求められます。

信頼できる人に任せたいという気持ちは当然ですが、信頼=適任ではない場合もあるのが現実です。
制度を上手に活用し、遺言内容を実現できる仕組みを備えることが、本当の意味での遺言作成といえるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です