――相続人以外への感謝をカタチにできるのは、遺言だけ
事例概要
Cさん(85歳・男性)は、長男の嫁であるYさんと同居し、晩年は介護を受けて暮らしていました。
Yさんは実の子ではないため法定相続人ではありませんが、Cさんは「感謝の気持ちを伝えたい」と考え、「家の名義をYに渡したい」と口頭で伝えていました。
ところが――
Cさんが急逝し、遺言書はありませんでした。
起こったこと
- 法定相続人は、長男・次男・長女の3人
- 不動産も預貯金も、すべて相続人3人の法定相続分で分割することに
- 長男の嫁であるYさんは、一切の相続権がないため、住んでいた家から出ていくことに
- 介護を続けてきたYさんは大きな精神的ショックを受け、「口約束だけでは何も残らない」と痛感
なぜこの事態になったのか
- 介護や同居など、情的・道義的なつながりがあっても、法律上の相続権は発生しない
- 被相続人の「想い」も、遺言というカタチで残しておかなければ効力を持たない
- 特定の人物に財産を遺したいときには、「遺贈」という制度の利用が必要
公正証書遺言で防げたこと
- 「Yに家を遺贈する」と明確に書くことで、相続人以外の人にも財産を遺すことができた
- 公正証書遺言なら法的効力が確実で、無効になるリスクがほとんどない
- 「付言事項」でYさんへの感謝の気持ちを記すことで、他の相続人の理解を得ることにもつながった可能性がある
解説
相続人以外の方に財産を遺すには、「遺贈」という制度を利用し、遺言でその意思を明確にしておくことが不可欠です。
特に、長男の嫁や内縁の配偶者、介護してくれた知人など、
感謝を伝えたい相手が法定相続人でない場合は、遺言が唯一の手段になります。
“ありがとう”の気持ちを、遺言で確かなカタチにしておくこと――
それが、遺される人にとっても最良の贈り物になるかもしれません。
次回は、「認知症の進行で遺言作成のタイミングを逃したケース」についての想定事例をご紹介します。

