介護を担った長女に遺言で伝えた、ありがとうの気持ち
事例概要
Hさん(85歳・女性)は、3人の子どもがいます。
その中で長女Iさん(58歳)は、10年以上にわたり、同居しながらHさんの介護を一手に引き受けてきました。
他の兄弟2人は遠方に住んでおり、介護にはほとんど関わっていませんでした。
Hさんは「自分が亡くなった後、Iにだけ負担をかけたと思われたくない。せめて形で報いたい」と思い、公正証書遺言の作成を決意します。
Hさんの遺言内容
- 自宅と預貯金の一部をIさんに多めに相続させる内容に
- 遺言の付言事項には、「あなたの支えがなければ、ここまで生きられなかった。本当にありがとう」と感謝の言葉を記す
- 他の子どもたちには、自分の思いと経緯を事前に伝えておくことも行いました
遺言がもたらした結果
- Hさんの死後、遺言に従って、Iさんは他の兄弟より多くの財産を相続
- 公正証書遺言であったため、内容に争いは起こらず
- 他の兄弟も、母の言葉を読んで、「納得できた」「自分では介護できなかったから当然」と受け入れることができた
- 家族の中で感謝と尊重の空気が保たれた
解説:介護を担った家族に「報いる」という選択
- 民法では「寄与分」という考え方もありますが、証明の負担が重くトラブルになりやすい
- その点、遺言であらかじめ分け方を明記しておけば、無用な争いを回避できる
- 感謝の気持ちを付言に記すことで、法的効力だけでなく心情面の理解も得やすくなる
ポイント
- 公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認不要で即効性がある
- 内容が明確に残るため、相続人間の誤解や不信を防ぎやすい
- 介護という「見えにくい貢献」を、しっかり評価する方法としても有効

