【医療と法務|慢性心不全 第4回】

任意後見を考えたが「その時」は突然やってきた

※本記事は想定事例です

■ 想定事例
80代男性・Bさん。
慢性心不全の診断を受けてから数年、自宅で生活を続けていました。

日常会話や判断は問題なく、
医師からも
「今すぐどうこうという状態ではない」
と説明を受けていました。

ある日、家族との会話の中で、

「もし今後、自分で判断できなくなったら困るな」
「任意後見っていう制度があるらしいな」

という話題が出ます。

■ 「元気なうちに考えよう」という判断

Bさんは、

「今はまだ元気だし、急がなくてもいい」
「次の外来が終わってから、ゆっくり考えよう」

と考え、具体的な手続きには進みませんでした。

慢性心不全の症状も落ち着いており、
周囲から見ても「まだ先の話」に思えたのです。

■ その数日後、突然の急変

しかし、その数日後の夜、
強い呼吸苦が出現し、救急搬送。

集中治療室での管理となり、
医師からは

「しばらくは意思確認が難しい状態が続く可能性があります」

と説明を受けました。

Bさんは意識はあるものの、
会話は断片的で、
契約内容を理解し判断する状態ではありませんでした。

■ 任意後見契約は「後から」は作れない

家族は、

「せめて、任意後見だけでも今からできないか」

と考えましたが、
任意後見契約は、

・本人に十分な判断能力があること
・内容を理解したうえでの意思表示

が前提となる制度です。

この時点では、
制度を使うための条件そのものを満たしていませんでした。

結果として、

・預金の管理
・医療費や介護費の支払い
・施設契約の判断

を家族だけで進めることになり、
大きな精神的負担を抱えることになります。

■ 慢性心不全に潜む「判断能力の崖」

慢性心不全では、

・少し前まで普通に話していた
・しかし、急変すると一気に判断が難しくなる

ということが現実に起こります。

Bさんのケースでも、

「考え始めた時点」では間に合った
「手続きを先延ばしにしたことで」間に合わなかった

という結果になりました。

■ この事例が示す教訓

慢性心不全において、

「まだ大丈夫」は
「制度を使える最後のタイミングかもしれない」

という視点が重要です。

任意後見や財産管理委任契約は、
“必要になってから”では遅い制度です。

■ 次回予告

次回は、
慢性心不全と財産管理委任契約の違いと使い分けについて、
制度解説として整理します。


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