【医療と法務|慢性心不全 第8回】

死後事務委任契約があったことで「家族が立ち止まらずに済んだ話」

※本記事は想定事例です

■ 想定事例
80代女性・Dさん。
慢性心不全で通院と入退院を繰り返しながら、一人暮らしを続けていました。

配偶者には先立たれ、子どもは遠方在住。
Dさんは、次第にこんな不安を口にするようになります。

「もし急に亡くなったら、誰が何をしてくれるんだろう」
「子どもに全部任せるのは、負担が大きい気がする」

■ 元気な時期に決めた「もしもの後のこと」

体調が比較的安定していた時期、Dさんは

・葬儀は簡素でよい
・特定の宗教的儀式は希望しない
・施設や病院への支払いをきちんと済ませたい

という思いを整理しました。

そして、
**死後事務委任契約(公正証書)**を結び、

・葬儀・火葬・納骨に関する手配
・医療費・施設費の精算
・各種解約・行政手続き

を委任することにしました。

■ その数か月後、突然の急変

ある夜、Dさんは自宅で体調が急変し、そのまま帰らぬ人となります。

子どもは急いで駆けつけましたが、

・何から手を付ければよいのか
・どこに連絡すべきか
・母の希望は何だったのか

分からない状況でした。

しかし、死後事務委任契約があったことで、

・委任された内容に沿って手続きが進行
・子どもは判断を迫られ続けることがなかった
・「これでよかったのか」という迷いが少なかった

という結果になりました。

■ 家族が感じた「安心」

後日、子どもはこう振り返ります。

「母が自分で決めてくれていたから、
 私たちは“見送ること”に集中できました」

慢性心不全のように、
いつ急変が起こるか分からない病気では、

残される家族の心の負担を減らす備えが、
非常に大きな意味を持ちます。

■ この事例が示す教訓

死後事務委任契約は、

・家族がいない人のためだけの制度
・特別な人が使う制度

ではありません。

慢性心不全のように、

・急変の可能性がある
・判断能力がある時期が限られる

病気だからこそ、
現実的な備えとして検討する価値があります。

■ 次回予告

次回は、
慢性心不全における「制度の組み合わせ方」
(遺言・任意後見・財産管理・死後事務)を、
解説として整理します。


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