【医療と法務|前立腺がん 第4回】

遺言と家族信託、何が違う?

~がん療養中の財産管理に必要な制度の整理~


進行性の前立腺がんのように、「判断能力はあるが体力が衰え、療養が長期化する可能性がある」ケースでは、
遺言だけでは不十分な場合があります。
本稿では、公正証書遺言と家族信託の違いを整理し、がん患者における実践的な使い分けをご紹介します。


❖ 基本の整理|遺言と家族信託

制度名主な役割発効のタイミング主な目的
公正証書遺言死後の財産処分死亡後相続トラブル防止・意思の実現
家族信託(民事信託)生前の財産管理契約締結直後から病気・認知症による判断力低下に備えた管理

どちらも「自分の希望を形にする制度」ですが、機能するタイミングが異なります。


❖ 前立腺がん患者にとっての使い分け

✅ 遺言が有効なケース

  • 相続する家族が複数いて、争いを避けたい
  • 死後の寄付や特定の人への分配などを確実に行いたい
  • 名義変更や銀行手続きで遺言が必須となる財産がある

✅ 家族信託が有効なケース

  • 今後、判断能力や体力の低下が予測される
  • 入退院や施設利用を見据えて、不動産や預金の柔軟な管理が必要
  • 配偶者や子どもが療養中の支援をスムーズに行いたい

❖ 併用がベストな理由

家族信託と遺言は排他的ではなく、補完的な制度です。

例えば:

  • 信託で生前の資産を管理しながら、遺言で残余財産の行き先を指定
  • 信託契約に入れなかった財産を遺言でフォロー
  • 信託契約終了後の「帰属先(誰のものになるか)」を遺言で補足

❖ 注意点:どちらも「元気なうち」にしかできません

  • 家族信託の契約には、意思能力(判断能力)が必須です
  • 公正証書遺言も、公証人が意思確認を行うため、「元気な今」が唯一のチャンス

❖ まとめ|前立腺がんと制度活用のポイント

  • 遺言は「死後」の備え、信託は「生前の管理」の備え
  • がん患者の生活状況に応じて、制度を組み合わせることが重要
  • 法律の知識と医療の理解を組み合わせた支援が必要

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