Case 06|若年がん患者が“これから”を見据えて遺言を作成したケース

はじめに

「遺言は高齢になってから考えるもの」
そう思われがちですが、病気をきっかけに、若い世代でも遺言について考える方が増えています。

がんと診断されたとき、将来への不安や、家族への心配が一気に押し寄せてくることがあります。
そんな中で、公正証書遺言は、今の想いを整理し、自分らしく生きるための支えとなることがあります。


想定事例|「まだ若いからこそ、伝えておきたいことがある」

事例:高橋さん(34歳・女性/長野市在住)

結婚して7年。小学生の子どもが一人います。
1年前、乳がんの診断を受け、手術と抗がん剤治療を経て、現在も通院治療を継続中です。

治療をしながらの生活は、想像以上に体に負担がかかり、
仕事、家事、育児のすべてに「これまで通り」が通じなくなりました。

「もし、私に何かあったら、この子はちゃんとやっていけるのかな……」

夜、子どもの寝顔を見ながら、そんな不安が胸をよぎるようになったといいます。


遺言を考えたきっかけ

ある日、病院の待合室で、同じ世代の患者さんと話す機会がありました。
その方がぽつりと、

「自分に何かあったときのこと、考えるようになりました」

と話したのを聞き、高橋さんは「自分もきちんと準備しておこう」と思うようになりました。

夫と話し合い、
「万が一のとき、家族が困らないように」
「子どもへ、きちんと想いを残しておきたい」
という気持ちが強くなっていったといいます。


整理したポイント

高橋さんは、次のことを一つひとつ確認しました。

  • 預貯金・保険の整理
  • 住宅ローンや生活費への配慮
  • お子さまの養育に関する希望
  • 夫へのメッセージ(付言事項)
  • お子さまへの手紙(別紙)

「もしもの時」ばかりを考えるのは辛い作業でしたが、
同時に、「今、生きている時間を大切にしよう」と思えるきっかけにもなりました。


気持ちの変化

遺言作成を終えたあと、高橋さんはこう話してくださいました。

「不思議と、少し前向きになれた気がします」

「準備をしたことで、怖さが消えたわけではないけれど、
 家族のことを守れるような気がして、心が落ち着いた」
とも話されていました。


医療に理解のある行政書士として

医療現場の声に触れる中で、治療と生活の両立に悩む方々や、
ご家族を思う温かい気持ちに数多く出会ってきました。

その経験を大切にしながら、行政書士として、
年齢や状況を問わず、その方の気持ちに寄り添った支援を大切にしています。

若い方ほど、「遺言なんて早すぎる」と感じるかもしれません。
けれど、準備することは「諦めること」ではなく、
**「大切な人のために、きちんと生きる選択」**でもあります。


まとめ

若年でがんと向き合うことは、想像以上につらいものです。
それでも、「これからをどう生きたいか」を考え、
家族の未来を思って準備を進めることは、決して後ろ向きな行為ではありません。

高橋さんのように、
「今」を大切にしながら、そっと備えをしておくことで、
気持ちに少しの余裕が生まれることもあります。

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