「財産だけじゃない」
遺言に込められる“本当の想い”とは?
想定事例|「ありがとう」だけは、きちんと伝えたかった
Aさんは、公正証書遺言の内容を考える中で、
あることが心に引っかかっていました。
「財産のことは決められるけれど、
それだけで本当にいいのだろうか…」
長い治療生活の中で、
支えてくれた奥様やお子さんへの思い、
言葉にできなかった感謝の気持ち――
「せめて、ありがとうだけは、きちんと残したい」
Aさんにとって、遺言は「分け方を決める書類」ではなく
人生の想いを締めくくる手紙のような存在になっていました。
遺言には「気持ち」も残せます
法律的に効力を持つのは、
財産の分け方などの「遺言事項」ですが、
それとは別に、
付言事項(ふげんじこう)
という形で、
気持ちやメッセージを遺すことができます。
例えば――
- これまでの感謝の言葉
- 家族へのねぎらいの言葉
- 介護してくれた人への想い
- 子や孫への応援のメッセージ
こうした内容は法的な拘束力はありませんが、
残されたご家族の心を大きく支えるものになります。
争いを防ぐのは「言葉の力」
相続トラブルの多くは、
「財産の多さ」ではなく、
✅ 説明がなかった
✅ 気持ちが伝わらなかった
✅ なぜこの分け方なのか分からない
という“心のすれ違い”から起こります。
付言事項に
「このような理由で、このように分けました」
と一言書いておくだけで、
ご家族の受け止め方が大きく変わることもあります。
「財産が少ないから遺言はいらない」は誤解です
よくいただくご相談に、こんなものがあります。
「大した財産がないから、遺言までは…」
しかし実際には、
- 不動産がひとつある
- 預貯金が複数ある
- 家族関係が複雑
- 特定の人に感謝を伝えたい
こうした場合こそ、
遺言が「想いをつなぐ道しるべ」になります。
医療に理解のある行政書士として
私は医師ではありませんが、
医療現場の声に触れる中で、
病気と向き合うことが、どれほど心に負担をかけることなのかを
多くの方のお話から学んできました。
治療の不安の中にある方が、
「せめて家族のことだけは安心したい」と思われたとき、
遺言は、その想いを形にできる手段のひとつです。
専門家としてだけでなく、
ひとりの“話を聞く人”として、
寄り添える存在でありたいと考えています。

