海外に不動産を所有している場合の相続手続き
― 日本の相続と「現地手続き」が同時に発生します ―
被相続人が、海外に不動産を所有していた場合、
相続手続きは日本国内だけで完結しません。
日本での相続関係の整理と並行して、
国ごとの法律に基づいた相続手続きが必要になります。
海外不動産相続の基本原則
まず押さえておきたい大原則は次の2点です。
原則① 日本の相続人確定は「日本法」
被相続人が日本人であれば、
✅ 相続人の範囲
✅ 法定相続分
は原則として日本の民法で判断されます。
原則② 不動産の手続きは「現地法」
一方で、
✅ 登記名義変更
✅ 現地裁判所での承認
✅ 書類要件
は、不動産の所在する国の法律に従います。
必要になる主な手続き
✅ 日本で行う手続き
まず、日本国内で行うのは次の作業です。
① 戸籍収集による相続人確定
→ 被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集
② 相続関係説明図の作成
→ 家族関係を図にまとめる
③ 遺言書の有無の確認
→ 公正証書・自筆証書の調査
④ 遺産分割協議書の作成
→ 海外不動産も含めて協議内容を文書化
✅ 海外で行う手続き(例)
国によって異なりますが、一般的には次のような手続きが発生します。
◼ 現地の登記名義変更申請
◼ 現地裁判所での相続承認手続
◼ 公証人による認証取得
◼ 書類のアポスティーユ取得
◼ 日本書類の翻訳
日本の書類はそのまま使えない
海外では、日本の戸籍や遺産分割協議書は
「そのままでは通用しない」ことがほとんどです。
必要になる代表的な処理
✅ 公証役場での認証
✅ 外務省の認証
✅ アポスティーユ取得
✅ 翻訳証明付の翻訳文
よくあるトラブル
❌ 日本の遺産分割協議書が通らない
❌ 翻訳不備で差し戻される
❌ 現地制度が日本と全く違う
❌ 相続税の取扱いが複雑
❌ 登記に何か月もかかる
税務面の注意点
海外不動産でも、日本の相続税の課税対象になります。
主な注意点
✅ 現地評価額の算定方法
✅ 為替レートの確定日
✅ 二重課税の調整(外国税額控除)
✅ 所得税・譲渡税との関係
※ 税務については税理士対応になります。
行政書士ができるサポート
行政書士は、日本側で行う
✅ 戸籍収集
✅ 相続人確定
✅ 相続関係説明図作成
✅ 遺産分割協議書作成
✅ 翻訳手配・書類調整
✅ 各国手続きの準備支援
を担当します。
※ 海外での登記実務は、現地専門家との連携となります。
弁護士・司法書士・税理士との役割分担
| 専門家 | 役割 |
|---|---|
| 行政書士 | 国内書類整備・翻訳支援 |
| 司法書士 | 国内不動産登記 |
| 弁護士 | 国際相続の紛争・法的整理 |
| 税理士 | 相続税・申告業務 |
| 現地専門家 | 登記・裁判所手続 |
生前対策の重要性
海外不動産がある方ほど、
✅ 遺言書作成
✅ 管理会社情報の記録
✅ 登記情報の保管
✅ 現地法の確認
が重要になります。
まとめ
海外不動産の相続は、
日本法 × 現地法
日本手続 × 海外手続
の二重構造です。
相続が始まってから調べ始めるのではなく、
生前の備えが相続人を守ります。

