【医療と法務|慢性心不全 第1回】

慢性心不全とは何か

――「いつ悪化するかわからない病気」と法的備えの必要性


慢性心不全は、がんのように明確な進行段階が見えにくく、
**「良くなったり、悪くなったりを繰り返す病気」**として知られています。

そのため、医療の現場では

「まだ元気だから大丈夫」
「前回も回復したから、今回も何とかなるだろう」

と考えられやすく、法的な備えが後回しになりがちな疾患でもあります。


■ 慢性心不全の特徴と生活への影響

慢性心不全では、次のような状況が現実に起こり得ます。

  • 突然の息切れ・浮腫で緊急入院
  • 入院後は回復し、いったん日常生活に戻れる
  • しかし数か月後、再び悪化して再入院
  • そのたびに体力・判断力が少しずつ低下していく

この「急変と回復を繰り返す経過」が、
法務の観点では非常に重要な意味を持ちます。


■ 「判断能力がある期間」が断続的に訪れる病気

慢性心不全では、

  • 入院中は判断が難しい
  • 退院後しばらくは、会話も判断もしっかりできる
  • しかし次の悪化では、再び判断が難しくなる

というように、
意思能力が「ある時期」と「ない時期」を行き来することがあります。

このため、

  • 任意後見契約
  • 財産管理委任契約
  • 公正証書遺言

といった制度を、
**「作れるタイミングを逃さないこと」**が非常に重要になります。


■ 慢性心不全と法務が交差する場面

実務上、慢性心不全の方が直面しやすい法的課題には、次のようなものがあります。

  • 入退院を繰り返す中での
     ▶ 医療費・介護費の支払い管理
  • 体力低下に伴う
     ▶ 施設入所・在宅医療契約
  • 判断力が揺らぐ中での
     ▶ 預金管理・不動産・契約更新
  • 万一に備えた
     ▶ 遺言・死後事務の整理

これらは、判断能力が低下してからでは対応が難しくなるものばかりです。


■ 「まだ元気な今」だからこそ考える法的備え

慢性心不全は、
「今日できていることが、明日もできるとは限らない」病気です。

だからこそ、

  • 元気な時期に
  • 落ち着いて
  • 自分の意思を文書に残しておく

この積み重ねが、
将来の自分自身と、家族の負担を守ることにつながります。


■ 行政書士が関われる支援の視点

行政書士は、医療行為には関与できませんが、

  • 任意後見契約・財産管理委任契約の設計
  • 公正証書遺言の作成支援
  • 死後事務委任契約の整理
  • 家族が混乱しやすい場面の「制度的整理」

といった形で、
医療と生活の“つなぎ目”を法務で支える役割を担うことができます。


■ まとめ

慢性心不全は、
「いつ備えるか」が結果を大きく左右する病気です。

悪化してからではなく、
回復している“今”こそが、法的備えの最適なタイミングといえます。

次回は、
「慢性心不全で突然入院したことで、家族が直面した現実」を
想定事例としてご紹介します。


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