Case 02|入院中に公正証書遺言を作成する場合
はじめに
入院中の方から「遺言を作りたいのですが、病院にいても可能ですか?」というご相談をいただくことがあります。
公正証書遺言は、病院であっても作成が可能です。
公証人が出張して作成に立ち会う制度があり、行政書士が準備や調整をお手伝いすることで、
体調に負担をかけずに手続きを進めることができます。
想定事例|「入院中でも、伝えておきたい想いがある」
事例:中村さん(72歳・女性/須坂市在住)
中村さんは、乳がんの再発により入院中。
抗がん剤治療を続けながら、「体調の良い日」を見つけては本を読んだり、娘さんと電話をしたりして過ごしています。
ある日、病室で娘さんと話しているときに、ふと口にしました。
「もし私に何かあったとき、家のことや貯金のこと、きちんとしておかないとね…」
娘さんは「そんなこと言わないで」と笑いながらも、
お母さまの想いを受け止め、遺言の作成を一緒に考えることにしました。
手続きの流れ
入院中に公正証書遺言を作成する場合、主な流れは次のとおりです。
- 行政書士へのご相談・内容の整理
財産の整理、希望する分配、想いとして伝えたいことを確認します。
体調や検査予定などを考慮し、無理のないスケジュールで進めます。 - 公証人との調整・書類準備
行政書士が公証役場と連携し、病院での出張作成を依頼します。
本人確認書類、印鑑証明書、財産に関する資料などを整えます。 - 病院での作成当日
公証人と証人(2名)が病室に伺い、遺言内容を読み上げ、署名・押印を行います。
必要に応じて、ベッド上での対応も可能です。
体調と気持ちに配慮したサポート
中村さんの場合、治療の合間に少しずつ話を進めました。
「疲れやすい日もあるので、短い時間で区切りながらゆっくり進めましょう」とお伝えし、
打合せも20〜30分単位で設定。
内容を決めていく過程では、娘さんへの感謝や、これまでの生活への想いが自然と語られました。
「娘には迷惑をかけたくないけれど、感謝だけは伝えたいの」
そうしたお気持ちを言葉にして、遺言書の「付言事項」として残しました。
遺言は、財産を分けるためだけのものではなく、気持ちを伝えるための大切な手段でもあります。
医療に理解のある行政書士として
医療現場の声に触れる中で、治療と生活の両立に悩む方々や、
ご家族を思う温かい気持ちに数多く出会ってきました。
そうした経験を通じて感じた「人の想い」を大切に、
行政書士として、一つひとつのご相談に丁寧に向き合っていきたいと思っています。
入院中の方にとって、体調の変化や検査予定に合わせながら手続きを進めることは簡単ではありません。
だからこそ、
- 医療スタッフとの連携を意識したスケジュール調整
- 公証人との事前打合せの代行
- ご本人とご家族双方に寄り添った説明
を通じて、安心して手続きを進めていただけるよう努めています。
まとめ
中村さんは、遺言作成を終えたあと、
「これで心の整理がつきました。あとは治療を頑張ります」
と笑顔で話してくださいました。
入院中であっても、「自分の意思を残したい」という想いを形にすることは可能です。
体調や気持ちに配慮しながら進めることで、
その人らしい「生き方」と「残し方」を実現できます。


