相続手続きにおける「遺言書」の活用場面
― 遺産分割協議書との対比でわかるメリット ―
相続手続きでは、遺言書がある場合と遺産分割協議書を作る場合とで、手続きの流れは大きく変わります。
ここでは、両者の違いを踏まえ、遺言書がどのような場面で効果を発揮するのかをわかりやすく整理します。
1|遺言書と遺産分割協議書の基本的な違い
● 遺言書
被相続人が 「自分の財産を誰にどう渡すか」 を生前に決めておく文書。
・法的効力あり
・相続開始後は、原則その内容どおりに財産を承継できる
・相続人間の協議が不要
● 遺産分割協議書
相続人全員で 「財産をどう分けるか」 を決めて書面にまとめたもの。
・相続人全員の合意が必要
・合意できないと相続手続きが進まない
・相続人間の事情・感情が反映され、まとまりにくいことも
2|遺言書が力を発揮する典型場面5つ
遺産分割協議では調整が難しいケースほど、遺言書による解決効果が高まります。
① 相続人同士の関係が複雑
再婚・前妻の子・認知した子などがいる場合、
相続開始後に初めて顔を合わせる相続人がいることも珍しくありません。
遺産分割協議は調整が長期化する傾向があります。
→ 遺言書があると、協議不要でスムーズに手続き可能。
② 不動産が中心の相続
長野県でも典型的ですが、
・自宅
・農地
・アパート
など、不動産中心の相続は「誰がどれを取得するか」で揉めやすい分野です。
→ 遺言で取得者を明確に指定しておけば、遺産分割協議が不要。
③ 医療や介護で特定の家族が長期間支えたケース
医療・介護の現場では、ご家族の負担が長期にわたり偏ることがあります。
・遠方の家族は協議に参加しづらい
・介護を担った家族への理解が不十分で感情的対立が起きやすい
→ 遺言書で 「介護に尽くしてくれた子に自宅を相続させたい」 と意思を示しておくと、相続後の調整が不要になります。
④ 急な病状変化や終末期を見据えた備え
がんや難病などで、
「いずれ意思表示が難しくなる可能性がある」
という医療場面では、判断能力がしっかりしているうちに遺言書を作成しておくことが重要です。
→ 遺言書があれば、相続人が協議で迷わず済み、速やかな手続き・早期の保険金請求や名義変更が行えます。
⑤ 事業承継・農地承継が絡むケース
家業や農地の承継では、
「誰が担い手となるか」
を遺言で示しておくことで、相続人の合意を待つ必要がなくなります。
3|遺産分割協議書が適している場面
遺言書がなくても協議がスムーズに進む場合もあります。
● 仲の良い兄弟で、柔軟に分けたいとき
遺産を売却し、等分するようなケースでは遺産分割協議書で問題ありません。
● 遺言書があるが、相続人全員が合意して内容を変更したいとき
相続人全員の署名押印があれば遺言内容と異なる分割も可能です。
4|遺言書を作ると、相続手続きはここまで変わる
【遺言書がある場合】
- 公正証書遺言なら検認不要
- 法務局・金融機関で遺言書に基づき手続きが進む
- 相続人全員の署名押印が不要
- 争いが起きにくくスピードが速い
【遺産分割協議書の場合】
- 相続人調査から開始
- 全員の意思確認に時間がかかる
- 感情面の対立が表面化しやすい
- 調停へ進むケースもある
→ 「争わない相続」には、遺言書が最も効果的なツールと言えます。
5|まとめ:遺言書は“相続手続きを前に進める力”を持つ
遺言書は単なる法律文書ではなく、
遺された家族が迷わず手続きを進められるための道しるべです。
特に、
・医療や介護の負担が偏った家庭
・不動産が多い相続
・家族関係が複雑
・スムーズに相続を終えたい
というご家庭では、遺産分割協議書に頼るより、遺言書の効果が大きく現れます。
相続の準備を考える際には、
「どんな手続きを家族に残すか」
という視点で、遺言書の活用を検討することをおすすめします。


