遺産分割協議がまとまらない理由と、遺言書が防ぐトラブル
― 実際の相続手続きから見える「遺言の必要性」 ―
相続手続きでは、「話し合えば簡単にまとまる」と思われがちですが、実際には協議が長期化する例が多くあります。
ここでは、協議がまとまらない典型理由を整理し、遺言書がそのリスクをどう防ぐのかを解説します。
1|協議がまとまらない典型理由4つ
① 不動産は“分けられない”財産だから
現金と違い、不動産は等分できません。
・家を誰が住むのか
・農地や山林をどこに引き継ぐか
・売却するか、そのまま維持するか
について意見が対立しやすい構造があります。
▶ 遺言書があると
・「この不動産は長男へ」など取得者を明確化
・協議自体が不要となり、手続きが加速
② 相続人の“生活環境の違い”が対立を招く
相続人が
・県外に住んでいる
・家族事情で話し合いに参加できない
・医療・介護を担った家族とそうでない家族の温度差がある
など、立場や見解が大きく異なると意見調整が難しくなります。
▶ 遺言書があると
被相続人の意思が基準となるため、調整の必要がなくなり、家族間の感情的対立も軽減。
③ 遺産の全体像が把握できない
「亡くなるまで財産の内容を知らなかった」という相続では、
不安から慎重になり、協議が進まなくなることが多くあります。
▶ 遺言書があると
遺産の内容を明示した「附言」や財産目録の作成が可能で、相続人の疑念が減る。
④ “遠慮”がトラブルを生むケース
兄弟間の関係が良くてこそ、
「揉めたくないから主張しない」
という遠慮が生まれます。
しかし、時間とともに不満へ変わり、結果として調停へ進む例も。
▶ 遺言書があると
被相続人が決めた配分として受け止められるため、相続人同士が対立しづらい。
2|遺言書が防ぐ“相続トラブルの芽”
● 争いの根を、相続開始前に断つ
協議が必要な状態を生前に解消するため、
「遺言=争族(争いの相続)を予防する最も確実な方法」
と言われます。
● 手続きのスピードが大幅に変わる
協議が長期化すると、名義変更・銀行手続き・保険金請求など、すべてが止まります。
遺言書に基づけば、数週間で手続きが完了することも。
● 医療・介護の負担を反映しやすい
介護に尽くした子へ配慮したいという意思を残しやすく、
本人の想いを尊重した相続が実現しやすい。
3|医療・介護の視点で見る遺言書の役割
医療の現場では、
・がん
・難病
・認知症のリスク
など、将来的に意思表示が難しくなる可能性が予測されることがあります。
これらの場面では、
「元気なうちに遺言書を作っておく」
ことが、家族の負担軽減に直結します。
● 特に重要となるケース
・療養中の相続人が協議に参加できない
・遠方の家族との調整が難しい
・急な入院・終末期で手続きが滞る可能性がある
→ 遺言書があると、協議を待たずに最小限の手続きで完了できるため負担が小さい。
4|それでも遺産分割協議が向いているケース
遺言書が万能というわけではありません。
以下の場合は協議書のほうが柔軟です。
● 財産を売却して等分したい
現金化して平等に分けるなら協議書でOK。
● 遺言内容を変更したい(相続人全員の合意がある場合)
遺言より協議内容が優先されるため、家族の話し合いで対応可能。
5|まとめ:遺言書は“協議の壁”を越えるための準備
遺産分割協議は、当事者全員の合意が必要なため、
少しの行き違いでも前に進まなくなることがあります。
遺言書があることで、
・協議不要
・手続きがスムーズ
・家族の負担が減る
という効果が明確に現れます。
相続の現場で繰り返し見られるトラブルを防ぐためにも、
「どの財産を誰に、どのように引き継ぐか」
を遺言書で示すことが、家族の安心につながります。


