Case 05|終末期を迎える前に、公正証書遺言と医療意思を整理したケース

はじめに

がん治療を続ける中で、「これ以上の治療が難しいかもしれない」と感じる場面に直面する方もいらっしゃいます。
そのような時期に考える遺言や医療の希望は、とても重く、同時に大切なテーマです。

公正証書遺言は、人生の最終段階を迎える前でも作成できます。
そしてそれは、財産の整理だけでなく、これからの時間をどう過ごしたいかを考えるための手段でもあります。


想定事例|「残された時間を、穏やかに過ごすために」

事例:山本さん(70歳・男性/長野市在住)

山本さんは、肺がんの治療を続けてきましたが、最近になって治療方針が「延命治療よりも生活の質を大切にする方向」へと変わりました。
入退院を繰り返す中で、体力の低下を感じつつも、ご自宅で過ごす時間を何より大切にしていました。

ある日、奥様にこう話されました。

「これからのこと、きちんと話しておきたいんだ」

財産のことだけでなく、延命治療の希望や、自分がどのように過ごしたいか。
山本さんは「自分の気持ちを、言葉として残しておきたい」と考え、行政書士に相談されました。


公正証書遺言で整理した内容

山本さんは、次の点について整理しました。

  • 預貯金や不動産の分配
  • 奥様への生活費配慮
  • 子どもたちへの感謝の言葉(付言事項)
  • 医療や介護についての希望(別紙での意思表示の整理)

遺言書そのものには財産に関する内容をまとめつつ、
医療や介護に関する希望は、家族が迷わないよう別途書面に整理しました。


ご本人とご家族の気持ちの変化

最初は、奥様も「そんな話は、まだ早いのでは…」と感じていました。
しかし、話し合いを重ねる中で、

「あなたの気持ちが分かって、少し安心しました」

と穏やかに話されるようになりました。

遺言の作成をきっかけに、山本さんご夫婦は、これまで話しづらかったことも少しずつ言葉にできるようになり、
「残された時間をどう過ごすか」を一緒に考える時間を持つことができました。


医療に理解のある行政書士として

医療現場の声に触れる中で、治療と生活の両立に悩む方々や、
ご家族を思う温かい気持ちに数多く出会ってきました。

そうした経験を通じて感じた「人の想い」を大切に、
行政書士として、一つひとつのご相談に丁寧に向き合っていきたいと思っています。

終末期に近い状況では、体調の変化も大きく、集中力が続かないことも少なくありません。
そのため、短時間での面談、日を分けた打ち合わせ、
公証人との日程調整など、できるだけご本人の負担を減らす進め方を心がけています。


まとめ

人生の終盤に遺言を考えることは、簡単なことではありません。
けれども、それは「終わりのための準備」ではなく、
**「残された時間を、安心して生きるための準備」**でもあります。

山本さんは、手続きを終えたあと、

「これで、気持ちが少し軽くなったよ」

と静かに話してくださいました。

法的な準備が整うことで、
「今」という時間に、安心して向き合えるようになる——
そんなお手伝いを、誠実に続けていきたいと考えています。

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