【医療と法務|慢性心不全 第3回】
慢性心不全と「公正証書遺言」が特に重要になる理由
慢性心不全は、
**法務の観点から見ると「遺言の作成タイミングが非常に難しい病気」**の一つです。
そのため、数ある制度の中でも
公正証書遺言との相性が特に高い疾患といえます。
今回は、その理由を整理します。
■ 理由①「判断能力が安定している期間が読めない」
慢性心不全では、
・今日は会話も判断もしっかりしている
・しかし、数日後に急激に悪化する可能性がある
という状態が珍しくありません。
自筆証書遺言の場合、
・本人が全文を書く必要がある
・内容の理解や判断能力が後から問題になる可能性がある
というリスクがあります。
一方、公正証書遺言では、
・公証人が意思能力を確認
・内容を口頭で確認しながら作成
・医師の診断書を求められる場合もある
ため、
「作成時に判断能力があったこと」を後から証明しやすいという大きなメリットがあります。
■ 理由②「短い回復期」を確実に形にできる
慢性心不全の方に多いのが、
・入院 → 回復 → 退院
・しかし、元気な期間は長く続かない
という経過です。
この「短い回復期」に、
・内容を簡潔に整理
・必要最低限の意思を反映
・一度で確実に完成させる
という点で、公正証書遺言は非常に有効です。
時間をかけて何度も書き直す必要がないため、
体力的・精神的な負担も軽減されます。
■ 理由③「家族が後で悩まなくて済む」
慢性心不全では、
・突然の再入院
・容体急変
・意思確認ができないままの判断
が起こり得ます。
遺言がない場合、家族は
・遺産分割協議
・「本人はどうしたかったのか」という迷い
・親族間の意見対立
に直面することがあります。
公正証書遺言があれば、
・内容の有効性が高い
・形式不備の心配がほぼない
・家族が手続きに集中できる
という点で、
残される側の心理的負担を大きく減らす効果があります。
■ 理由④「医療・生活の不安と同時に整理できる」
慢性心不全では、
・今後の治療
・在宅医療か施設か
・介護費用の確保
など、医療と生活の不安が同時に生じます。
公正証書遺言の検討をきっかけに、
・財産の把握
・家族への想いの整理
・死後事務や任意後見の検討
まで一体的に考えることが可能です。
これは、
医療と法務を同時に整理する入口として非常に重要です。
■ 行政書士が果たせる役割
行政書士は、
・医療の進行に配慮したスケジュール設計
・無理のない内容整理
・公証人との事前調整
・家族への説明補助
を通じて、
「体調が不安定な中でも、確実に意思を残す」
ための実務的な支援を行います。
慢性心不全のように
**“待ってはいけない病気”**では、特に重要な役割です。
■ まとめ
慢性心不全では、
・判断能力が「あるかどうか」ではなく
・「いつまで保てるか」が分からない
という現実があります。
だからこそ、
公正証書遺言という“確実性の高い方法”を早めに選ぶことが、
本人と家族の安心につながります。
次回は、
慢性心不全と任意後見・財産管理委任契約の考え方を、
想定事例を交えてご紹介します。
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