【医療と法務|慢性心不全 第5回】
慢性心不全における「財産管理委任契約」という選択肢
慢性心不全の方が直面しやすい課題の一つが、
**「判断能力が完全に失われる前から、生活上の手続きが重くなる」**という点です。
この段階で有効となるのが、
財産管理委任契約です。
■ 財産管理委任契約とは
財産管理委任契約とは、
本人に判断能力があるうちに、
・預金の管理
・公共料金や医療費の支払い
・契約手続きの代行
などを、信頼できる人に任せる契約です。
任意後見契約と異なり、
・家庭裁判所の関与がない
・発効までの手続きが比較的シンプル
という特徴があります。
■ 慢性心不全との相性がよい理由
慢性心不全では、
・体力が落ちて外出が難しい
・入退院で手続きが滞りやすい
・判断能力はあるが、対応する余力がない
という状態がよく見られます。
この段階で財産管理委任契約を結んでおくことで、
・支払い遅延の防止
・家族の負担軽減
・「本人が判断できているうち」の意思反映
が可能になります。
■ 任意後見契約との違い
混同されやすい点として、
・財産管理委任契約
・任意後見契約
の違いがあります。
| 項目 | 財産管理委任契約 | 任意後見契約 |
|---|---|---|
| 判断能力 | あることが前提 | 将来低下することを想定 |
| 発効 | 契約後すぐ | 判断能力低下後 |
| 家庭裁判所 | 関与しない | 監督人選任あり |
慢性心不全の方には、
・まず財産管理委任契約で日常を支え
・将来に備えて任意後見契約を検討
という段階的な設計が有効なケースも多くあります。
■ 「早すぎる」ことはない制度
財産管理委任契約は、
「まだ元気なのに、やりすぎでは?」
と感じられることがあります。
しかし慢性心不全では、
・体調悪化のタイミングが読めない
・準備できる期間が突然終わる
という特性があります。
そのため、
**元気なうちに整えておくことが、結果的に“ちょうどよい備え”**となります。
■ 行政書士の実務的な関わり方
行政書士は、
・管理内容の整理
・権限範囲の明確化
・他制度(遺言・任意後見)との整合性確認
・公正証書化のサポート
を通じて、
医療状況に配慮した契約設計を行います。
■ まとめ
慢性心不全では、
・判断能力がある
・しかし生活の負担が重くなる
という「中間的な状態」が長く続くことがあります。
その期間を支える制度として、
財産管理委任契約は非常に現実的な選択肢です。
次回は、
財産管理委任契約があったことで家族が救われたケースを、
想定事例としてご紹介します。
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