【医療と法務|慢性心不全 第9回】
慢性心不全における「法務制度の組み合わせ方」実務整理
慢性心不全では、
一つの制度だけで将来の不安をすべてカバーすることは難しいのが現実です。
そのため重要になるのが、
状態の変化を前提とした「制度の組み合わせ」です。
今回は、慢性心不全の経過に沿って、
どの制度をどう組み合わせるかを整理します。
■ 慢性心不全の経過と法務の視点
慢性心不全は、一般的に次のような流れをたどります。
① 体調が比較的安定している時期
② 入退院を繰り返し、生活の負担が増す時期
③ 判断能力が揺らぎやすくなる時期
④ 急変・終末期
それぞれの段階で、必要となる法務制度は異なります。
■ ① 安定期に考えるべき制度
この時期は、本人の判断能力が十分にあり、
制度設計を冷静に行える貴重なタイミングです。
・公正証書遺言
・財産管理委任契約
・死後事務委任契約
ここで重要なのは、
**「完璧を目指さず、最低限を確実に整える」**ことです。
■ ② 生活負担が増してきた時期
外出や手続きが負担になり始めたら、
・財産管理委任契約を実際に運用
・支払い・契約を家族等に任せる
ことで、本人の負担を軽減できます。
この段階では、
「まだ判断できるから不要」と考えず、
実務面の支援を先行させることがポイントです。
■ ③ 判断能力が不安定になってきた時期
この時期に備えて、
・任意後見契約
を、安定期のうちに準備しておくことが重要です。
慢性心不全では、
「ある日を境に急に難しくなる」
ということが起こり得るため、
任意後見は“使うため”ではなく“備えるため”の制度
と捉える必要があります。
■ ④ 急変・終末期への備え
・死後事務委任契約
・遺言による意思表示
が整っていれば、
家族は
「判断」ではなく「対応」に集中できます。
これは、
医療の現場においても非常に大きな意味を持ちます。
■ 組み合わせの一例(モデル)
慢性心不全の方に多い組み合わせ例は、次のとおりです。
・公正証書遺言
・財産管理委任契約
・任意後見契約
・死後事務委任契約
すべてを一度に作る必要はありませんが、
全体像を理解したうえで、段階的に整えることが重要です。
■ 行政書士が果たす調整役
行政書士は、
・医療経過を踏まえた順序設計
・制度同士の重複や矛盾の整理
・家族への説明と合意形成
・公証人等との調整
を通じて、
医療と法務を現実的につなぐ役割を担います。
■ まとめ
慢性心不全では、
「どの制度を使うか」以上に、
「いつ・どう組み合わせるか」が重要です。
元気なうちに全体像を描いておくことが、
将来の混乱を防ぐ最大の備えになります。
次回はいよいよ最終回。
慢性心不全という病気と向き合いながら、法的備えを考える意味をまとめます。
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